「絶海の孤島」南・北大東島で、新漁港整備が島の漁業を変えた

2023年1月20日

南大東漁港(北大東地区)

 沖縄本島から東に約360キロほど離れた太平洋上に位置する南大東島および北大東島で、2019年に南大東漁港(南大東地区・北大東地区)が完成した。第4種漁港として県水産業の振興を図るための漁場開発・避難前進基地を目指し、総工費300億円以上をかけて30年に及ぶ大規模な工事が行われた同漁港。完成から約4年がたった今、島の漁業はどのように変わったのだろうか。

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 島の周辺海域はマグロ類やサワラ、ソデイカなどの好漁場となっており、県内外の多くの漁船が操業している。しかし「地元漁業者は、長年大変厳しい環境下に置かれていた」と北大東村水産組合の知花実組合長は語る。

 断崖絶壁に高い波が押し寄せる北大東島では、新漁港が整備されるまで島の西・南・北に位置する3つの漁港から凪(な)いでいる場所を選択し、毎朝漁船を牽(けん)引して運ばなければならなかった。

 クレーンで船を吊(つ)り上げる必要があるため、オペレーターのいる午前5時から正午までしか漁ができず、「漁師なのに『定時勤務』を強いられていた」うえ、クレーンで吊り上げられる2トン未満の小型船しか利用できなかったという。

 漁港の整備が進み自由に漁ができるようになっただけでなく、島では若手漁業者が急増した。漁師を目指して島へUターンした知花組合長の長男が知人らに声をかけ、本島などからIターンの若手漁業者が6人ほど新たにやってきた。[....]