種間依存・競合関係

2017年11月9日

 「今年のイセエビ漁は過去最高、これは天敵のマダコが減ったためだと思う」は、以前私がカキむきを手伝った漁家からつい最近聞いた話。私がそのエビ網漁船に乗った4年前の4・5倍も獲れたそうである。当地では年々マダコの減少が続き困っているが、その一方で「イセエビが増えるぞ」という声もあったので、まさにその通りになったのである。

 これを知って改めて資源管理における大きな疑問点を思い起こした。かつてマサバ太平洋系群の資源回復計画を検討している時に、資源管理に詳しく著書も出版されている業界団体の岩崎寿男会長が「マサバとマイワシが同時にピークを迎えたことはなく、どちらかが増えればどちらかが減る。にもかかわらず研究者は担当した特定魚種だけで管理目標を定めている。おかしいとは思わないのか」と言ったその疑問である。

 すべての魚種が同時に増えることはないは、現実をみても理屈上においても極めて当たり前のこと。国連海洋法条約第61条にも資源管理では「資源間の相互依存関係を考慮する」と明記されている。しかし「Aが高位にあるので低位のBを増やすのは無理」というような、捕食・被食関係という「縦の依存」や同じ餌をめぐる「横の競合」の関係を、科学的数値により資源評価に組み込んだ例をいまだみたことがない。この点から、資源状況を分かりやすく伝えるための高位、中位、低位の割合を示した円グラフなどは、非常に誤解を招きやすいもの。本来それぞれ3分の1ずつあるのが正常な資源状況。よって仮に50%の魚種が低位であったとしても「半分もの資源が悪化」ではなく「33%の基準よりも多い17%の資源が悪化」ではないのか。

 最近「TAC真理教」の中に「初期資源量の20%」を管理目標に掲げる新宗派が生まれたようであるが、私にはますます現実離れした資源管理の方向に向かっているように思えて仕方がない。