漁村と漁港は日本の宝

2017年10月24日

 10月上旬家族でバンクーバーを旅行してきた。私には以前から気になる場所があった。それは母船式サケ・マス漁業の担当係長だった頃の話。同地に本部があった北太平洋漁業国際委員会の事務局の方が東京に来た時に「私は『セブンポテト』から来ました。『ナナイモ』です」と言ってみんなをキョトンとさせたが、実は事務局のある地名が「ナナイモ」だと分かって大笑い。その洒落(しゃれ)が大受けしたのがよほどうれしかったのか、その方は来るたびに同じことを繰り返していたが、今回その名の地下鉄の駅を見て、40年ぶりの念願がかなったのである。

 滞在中日帰りでバンクーバー島にある州都ビクトリアを訪れた。新潟県庁が佐渡島にあるようなものであるが、私が驚いたのは大型フェリーで約1時間半の航海中に、全く漁村も漁港も見当たらなかったこと。バンクーバーにはサケが大量に遡(そ)上するフレーザー川があり、本土と島との間のジョージア海峡はニシンの宝庫で、戦前には日本人が漁業目的に移住したというまさに世界的な好漁場のはずなのに。

 仮にこの好漁場が日本にあればどうであろうか。間違いなく相当数の漁村と漁港が点在していたであろう。概略平均でいうと、日本の海岸線3万キロに6000の漁村と3000の漁港、5キロに1つの漁村と10キロに1つの漁港がある。もちろん日本も豊かな漁場に恵まれているが、それだけが日本人がこれほど数多くの漁村と漁港に取り巻かれた国土をつくり上げることができた理由ではないと思う。いつも欧米を旅行した時に思うが、広大な国土に少ない人口というそもそも豊かな国だから、漁場が形成された時にだけ少数の大型漁船で出かけて獲る漁業で十分。日本のように多くの種類の地先資源を稠(ちゅう)密に利用し生きていく必要性は乏しい。小さな国土に広い海の日本にとって漁村と漁港は国の宝。それを踏まえず欧米型漁業に学べは愚の骨頂。