成長と自然災害

2018年9月11日

 台風21号で答志支所直属の船外機船1隻が転覆してしまった。なぜその船だけが。原因を聞くと台風接近時には漁船を岸壁と多くのもやいでつなぐが、その作業を最後までするのがその船の役割。よって自分の係留場所はどうしても風と波の強いいちばん端になる。自分が犠牲になり組合員の船を守ったということで「名誉の戦死」である。今回の21号は非常に強い勢力のまま上陸するのは25年ぶりにと聞いて、まさかと思い調べたら私が宮崎県庁に出向していた時に直撃した台風で、あれは私が経験した中でもいちばん風がすごかった。

 今年は豪雨災害もひどかった。7月に広島県の組合長研修会で講演したあと、呉市を見物してきた。車窓から多くのカキ養殖イカダが見え、呉市がカキの大産地ということを初めて知ったわずか数日後に、あの豪雨で大変な災害が起こった映像に衝撃を受けた。さらに、命に危険が及ぶほどの異常高温が続き、地球温暖化の深刻さをいやでも実感せざるを得ない夏だった。このままでは伊勢湾台風クラスが毎年1個ずつ来るという専門家の予想もあるとかで、そうなると食料生産基盤の漁港、漁船、農地、果樹などがやられ、冗談ではなく食料不足が起こるかもしれない。

 ところで、先般水産政策改革の説明会が三重県でも開催され、200人もの漁業者が出席した。水産庁との質疑は相変わらずあいまいで、漁業者はどう理解してよいやら首をかしげながら帰って行った。その中で「豪雨のたびに多くの木やゴミが流れ操業ができない、その対策を講じてほしい」との要望があったが、それに私は目を覚まされた気がした。今の日本漁業に企業参入や輸出拡大による成長産業化などにかまっている暇などあるのか。というより、自然災害を深刻化させている経済成長路線を水産政策改革で追随してよいのかという根本的問題である。「夏過ぎれば暑さを忘れる」前にその是非を国民に問うてみたい。