地方行政に注意喚起

2018年1月12日

 水産庁が規制改革推進会議に提出した「水産政策の改革の方向性」は、予想通りその意に沿った内容となり、強い危機感を抱かざるを得ないが、中でも「これは絶対に駄目」がある。それは「沿岸漁場の管理は、都道府県の責務としたうえで、都道府県が漁協などに委ねることができる仕組みとし、その際のルールを明確化することを検討する」である。これは、漁業法第一条の「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用によって水面を総合的に利用」に真っ向から反し、またコモンズ(共有資源)の管理において最も有効な「利害関係者による自主管理」として世界からも高く評価されているわが国の漁業管理制度を根底から否定するものである。

 私も監事として出席した昨年のJF熊野漁協の総会では、国が規制改革を忖(そん)度し漁協の漁場管理権限を弱め知事に移行させる漁業権運用の技術的助言が発端となった問題で、執行部と組合員とが怒鳴り合い大荒れとなった。何とかこの問題は漁協内部で納めたが、仮に「沿岸漁場の管理は、都道府県の責務」となれば、県庁の漁業調整担当課には、直接漁業者が乗り込んで、連日県庁中に怒声が響き渡ることになるのは必至。「やれるもんならやってみな!」であるが、県庁も決してそんなことは望んでないと思う。

 私には、国が規制改革の圧力をかわそうと地方に責任を転嫁しているとしか思えない。それはすでにクロマグロのTAC適用にみられる気がする。TAC魚種の増加は規制改革の従来からの要求。北洋漁業の数量取り締まり経験がある私には、定置網や多数の小型漁船の数量管理に大いに疑問がある。昨年もヨコワがたくさん来た。今年もTACオーバーが続発しよう。国はTAC魚種を増やし、守らせよと言えば済むが、非難されるのは地方。できないことはできないと明確に反対しないと規制改革のつけを払うのは地方行政。十分注意されたい。