困った正反対の現象

2018年11月15日

 4年ぶりに相模湾水産振興事業団主催のシンポジウムに出席した。テーマが「新しい水産資源管理政策」だったので、日々浜で資源の変動に接している者の立場から、新政策の虚構性とそれを押し付ける財界の隠された狙いについて講演してきた。厚かましくもまたお誘いに応じたのは、前回のシンポジウムが非常に勉強になったから。

 今回も期待にたがわず新たな発見があった。それは伊勢湾で起こっている困った正反対の現象が、各地の海でも起こっているのを知ったこと。汚水処理場の整備が進み、海がきれいになり過ぎて冬場の栄養塩不足で養殖ノリが十分育たない一方で、その同じ海で夏場には過去に堆積したヘドロが原因の貧酸素水塊が年々拡大し、底層にすむ魚介類に致命的な影響を与えていることである。そのために資源管理の優良事例であった東京湾のシャコや伊勢湾のイカナゴが、過去の周期的変動とは異なり、急に全く獲れなくなったのもそれが原因と指摘する意見があり、なるほどそうだったかと合点がいった。

 講演ではカリフォルニア湾の過去1700年間におけるマイワシの資源変動で、漁業が存在しなかった時でさえ何度も絶滅寸前まで減少し、かつ必ず復活していることを紹介させてもらった。環境要因で大きく変動する資源は人間には管理することはできないが、やらねばならないことはある。それが浜の資源管理のスローガン「海の環境保全」と「稚魚の保護」であり、偶然にも相模湾と答志島のそれがこの2点で一致したのである。

 資源管理の敵は昔も今も「海の環境破壊」。その最大の原因者の財界が改革を押し付けてきたのは何か裏がある。企業による海の私物化で漁業者から漁場や資源を取り上げ、例えば福島第一原発の「放射能汚染水」放出など海の汚染に反対する漁業者の権利を奪うこと。改革がもたらす危険性を十分肝に銘じておかねばならないと思う。