伊勢エビ漁はゴルフに似ている

2013年5月8日

 10月から始まったエビ漁が4月末で終わり、この間で124日出漁した。冬の夜中の漁業現場の厳しさは文字通り骨身にしみた。しかし、エビ漁がこんなに興味深いものとは思わなかった。甫母では漁場を分割し、順に移動することで公平に利用する。それでも漁業者間での漁獲に3倍程度の差が出る。だから面白いのである。

 エビ漁はゴルフに似ている。まず、一連の作業に緩急と強弱がある。波が砕ける岩場での揚網はダイナミックでドライバーショット。静かに黙々と網を修理するのはパットか。次に、頭脳と技術が求められる。片岡さんの頭の中には海底の起伏、底質などがすべてインプットされている。プロがコースの形状を知り尽くしているのと同じ。漁獲はエビのいる場所に網を設置できるかどうかで決まるが、これはピンの近くにボールを打てるかどうかに同じ。初め、何をしているのか分からなかったが、漁場に着くと、船を流したままでしばらく回りを見ている。水面下30?40?の狙ったポイントに底刺網を落とすには、潮流、風向などを計算しないとできない。プロがティーグランドで風を読んでいる姿にそっくり。4?5?ずれただけで、全然エビの掛かりが違う。ピンのそばにはバンカーがあるように、エビのいる海底は起伏があり網も根掛かりしやすい。網をはずすのに船を前後させ、ひと苦労するのはバンカー脱出のよう。時には網が揚がってこないギブアップもある。網の色や仕立てなど、エビ漁のノウハウを聞き始めるときりがなく、1冊の本になる。

 片岡さんの腕は甫母でトップクラス。しかし、初めの頃は高い新品の網を1日に何丈もダメにしたという。初めて出たコースで1ダース以上、ボールをなくしたようなものか。上達したコツを聞くと、克明な記録(日誌)と、安易に人に教わらず自分で考え試行錯誤したとのこと。残念ながら、甫母にはシニアプロしかいない。今のままでは匠の技が途絶えてしまう。早く、石川遼のような選手が入ってきてほしいが、そのためにはもっと賞金が多くないとダメだろう。ちなみに私は、片岡プロのキャディー見習いといったところか。