タコ爆発的大漁

2019年9月13日

 答志の市場を手伝い始めて5回目の夏を迎えたが、この夏のマダコ漁は昨年までとは一転し超大漁であった。これまでのタコ漁は年々減少の一途で、タコ壺漁師から「タコは減るばかりでどうにもならない」と嘆きを聞くばかりであった。これまではせいぜい一日100?程度しか揚がらず、現場でそれをずっとみてきた私には、一日2?を超える水揚げが続くのをみて、おおげさではなく「資源が爆発したのか」と思うような感覚を覚えた。
 タコ語が分かれば「何で急に増えたの?」とタコ本人に聞いてみたいが、言葉が通じる漁師さんは「10年ぶり、理由は分からん」とのこと。一方で、資源管理の優等生であった伊勢湾のイカナゴ漁が4年連続休漁になった現実を目の当たりにして、この連載で何度も書いたが、現役の時に漁業者を前にして「こうすれば資源はこうなります」とうそをついていた自分が恥ずかしい。

 現場にいると人間が資源に対しできることは極めて限られていると思わざるを得ない。もちろん全く意味がないわけではなく、例えば漁獲割合が50%の漁業で、禁漁にすれば翌年の加入を2倍にできる。しかし、自然界では同じ量の親からの加入が一気に10倍に増えたり、逆に10分の1に減ったりするので資源変動への影響力は比較にならず、せっかくの禁漁もほとんど効果がなく単に漁業者を困窮化させただけで終わることもある。

 私は漁業者が自然を前にした人間の無力さを何度も経験しながらも、なお資源管理に取り組もうとする姿をみると、少しでも神仏のご加護を得て家内安全、心願成就の思いから初詣で「お守り」を買い求める参拝者のような気がする。ところが自然を人間が支配できるかのごとく「この新しいお守りは欧米でよく売れ効果が出ている、買わないものは資源管理に後ろ向き」と、強引に売りつけようとする宗教団体に出会った時には、それはうそと思って注意してほしい。