カキ養殖は畑作ではなかった

2014年1月30日

 毎日カキをむいていて、どうして日々のカキの大きさや身質がこうも違うのか不思議でしょうがない。漁場の違いはある程度理解できるが、同じ漁場でもイカダの位置で違う。さらに同じイカダでも外側と内側で違う。外側のカキは身がしっかりしているが、形が小さい。どうも外側は栄養に恵まれるが、逆に波の影響を受けやすいためそうなるらしい。人間には、あの広い海はどこも同じように見えるが、カキの身になれば、ちょっとした違いでも、生育に大きな影響があるようである。また、同じホタテの殻についたカキでも大小さまざまであり、きれいにサイズが揃った畑のダイコンとは全く違う。動かないカキ養殖業は、畑作に近いと思っていたが、ここまでバラつきが大きいと、むしろプランクトンが魚でカキが定置網といったイメージに近いような気がする。

 もっと不思議なこともあった。食害と思われる理由で、丸坊主にされたワカメ養殖のロープに、再び予備の胞子の付いたひもを巻き付ける作業を行い、その後、他の漁業者の養殖ロープも見て回った。やはりみんな同じだったが、何といちばん外れのロープだけに、1?以上に成長したワカメがびっしりと生えていた。隣の丸坊主のロープとの距離はわずか約80?。さすがの浜口富太さんも、これには絶句。私も、みんな同じだからしかたないと諦めかけていたが、それを見た時には、逆にがっくりした。なぜなのか、他の漁業者も「全く分からない」であった。かわいそうだから、1つぐらいは残してやるかという食害魚の情けだろうか。

 現場にいると、海と生き物の関係は本当にデリケートで、人間の知恵では計り知れないものがあると感じる。生態系の下位にある生物でもこの状態なのに、さらにその上位にある魚類についてはおそらくそれ以上だろう。今さらながら、資源管理を担当していた時に、「こうすれば、こうなります」と偉そうに言ってきたものだと思う。自虐的になるが、資源管理の担当者はある意味「○○蛇に怖じず」でないとやっていけないと思う。