がんばる罰金

2019年6月26日

 答志島でのワカメ養殖漁期が終わると、その年の反省と来年に向けての課題解決のため「ワカメ養殖業者総会」が毎年開催されている。私も初めて傍聴させてもらったが、そこにあった申し合わせ事項の多さには驚いた。イカダの設置方法、作業日程、出荷の仕方などあらゆることのキメ細かなルールが定められており、例えば他人のイカダに迷惑をかけないためとか、全体の潮通しを阻害しないために種網を巻いてはいけない箇所を定めるなど、そこには自分だけがよければという組合員のわがままは認めないとする内容が多い。

 その中で私の関心を引いたのは、全漁家の幹縄一本当たりの水揚げ平均額より少ない漁家には、その差額の7%を徴収するというルールであった。その目的は漁協に水揚げせず自主出荷(分かりやすくいうと「闇売り」)した者に対する罰金のようなものであり、その金はイカダの標識灯など共通の必要経費に充当される。ところが、総会でこれに対し不満を述べる組合員がいた。その理由は闇売りしているからではなく全くその逆で、全量を組合出荷しているものの自分の家は人手が少なくいくらがんばっても平均値に届かない、それなのに罰金まで課せられるとは、というものであった。

 確かにこれでは「お前は貧乏だから罰金を課す」ようなもので「何かおかしいですね」と、あとから総会議長の支所運営委員長に聞いたところ、笑いながら「実は自分も毎年罰金を払っている。漁場を割り当てられている以上一定量を生産する義務がある。これは組合員ががんばろうという一つの目安にもなっているのでよい面もある」とのことであった。

 このように昔から漁業者は、改訂漁業法の「適切かつ有効に漁場を利用」を厳しく実践しているのである。国は上から目線で「がんばっている漁業者は支援する」というが、国の方こそが戦略特区に関する真実を国民に明らかにするためにがんばらなければならないのではないか。