「答志島トロさわら」宣言

2018年10月25日

 鳥羽市の主幹産業である観光と漁業とが連携し、名前は魚偏に春だがいちばん脂が乗る秋季限定の答志島の「サワラ」にブランドシールを貼っての出荷が、10月4日(答志の日)から始まった。10月8日が「鳥羽の日」とは知っていたが、答志の日は知らなかった。知らなくて当然、答志の住民すら初めて聞いたという急ごしらえの記念日だから。でもなかなか語呂もよく、ぜひ全国の皆さまが10月4日には答志島に「トロさわら」でも食べに行こうかと思っていただけるとありがたい。

 実は答志島に来るまで、伊勢湾でこんなに多くのサワラが獲れるとは知らなかった。もともと私には縁遠い魚で、資源回復計画第1号が「サワラ瀬戸内海系群」だったことから、初めて四国で刺身を買って食べた時の印象は、マグロの中トロのような味で、かつそれに劣らない値段の高さに人気度を感じる一方で、身質の軟らかさがもう一つといった感じもあった。その後答志島に来て分かったことは、季節でおいしさが全然違う魚であること。特に秋のサワラは三枚におろすと薄いピンクがかった白色で全身「トロ」と呼ぶにふさわしく、脂肪含量測定器の目盛りを振り切ったというのもうなずける。また、身質の軟らかさをカバーする食べ方も発見した。それが鉄火巻き。ノリのパリパリとした歯応えと具の軟らかさのバランスが絶妙で絶対お勧めであり、マグロよりも鉄火に合うというのが初めて食べた多くのお客さんの感想だった。

 さて予想していたことが起こった。一部の仲買人が落札後にブランドシールを剥がし始めたのである。漁業者には「何ということをしてくれるのか!」と思うが、それは「よい魚にシールを貼るとほかの魚の値段が下がり、全体として売り上げが減る」という心配からの商行為らしい。当分の間は根比べだが、最後は「トロさわら」にその価値があるかの消費者の判断が決着をつけることになろう。