秋サケ馴致短縮で回帰率2倍、東北区水研が水産学会報告

2018年4月3日

 東京海洋大学で3月30日に開催された日本水産学会ミニシンポジウムで水産研究・教育機構東北区水産研究所は、放流前のサケ稚魚を海面イケスで馴(じゅん)致する期間を通常の4分の1に短縮した群で、親魚回帰率が約2倍になったと報告した。餌生物の種類や密度、異常冷水の発生といった予測手法も合わせ、三陸サケ回帰率向上へ最適な放流手法をめぐり議論が交わされた。

 サケ稚魚の海水馴致は通常は1か月かけて行う。実験では個別の耳石温度標識を施すことで、異なる放流方法の効果を評価。2013年と14年の放流結果は、1週間の馴致群が放流後の沿岸滞留期で有意に高く、4年後の回帰率に至っては両年とも約2倍の違いが出た。

 馴致期間の短縮は給餌やメンテナンスのコスト上、労力軽減の効果も見込まれる。回帰率が向上した理由について、報告した東北区水研の佐々木系研究員は「1か月の馴致期間中にイケスは汚れる。飼育環境が悪化する前の開放が功を奏したのでは」と考察するが現状で明確な理由は示せないという。

 実験は14年以降も継続中で、今後の結果を確認したうえで普及拡大を図る。また、海水適応能力の強化を目的に10%の塩分を餌に添加した群や早期放流実験も開始しており、回帰率の評価を行う。[....]