改革と成長?海の限界と日本/太田義孝・日本財団ネレウス統括

2018年4月19日

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日本には漁業という優れたコミュニティが存在する?と説く太田総括

 日本財団のネレウスプログラム(ネレウス)の主催で昨年末、「海の限界」という刺激的なタイトルのシンポジウムが東京で開かれた。“海の限界”というメッセージから日本の水産関係者に何を伝えようとしたのか。ネレウスを統括する米ワシントン大学環境海洋学部の太田義孝助教授に聞いた。

 ◆太田/ネレウスは2011年に日本財団とカナダ・ブリティッシュコロンビア大学の共同で始まった国際海洋プログラム。17研究機関と50人の研究者が100以上のプロジェクトを進めている。

 気候変動がもたらす水産業への影響について研究しているウイリアム・チャン氏は、海の基礎生産量が20%以上落ち、魚は小さくなり、居場所も変わっていくことを科学的に予測している。その影響を海岸線の長い日本に置き換えてみれば、日本には魚がいなくなってしまう場所と魚が増える場所の2つができることになる。

 日本の水産業はものすごく層が厚い。行政も漁業者の話をちゃんと聞く。これはすごいこと。世界の行政は基本的に漁業者の話を聞かない。効率だけを求めるところほど漁業者の話は聞かない。漁業管理とは、魚を管理することでなく人を管理すること。人の話を聞かなくてできるわけがない。

 今の日本は、非常に多くの種類の魚をさまざまな方法で食べる食文化において多様性が残っている。そうした優れた部分を大切にしながら環境変化に対応できる水産業を残すことを重視してほしい。[....]