タイラギで人工授精法を発見応用も、水産機構と東大

2018年10月2日

人工受精卵から得たタイラギの着底稚貝=大分県農林水産研究指導センター提供

 水産研究・教育機構(宮原正典理事長)は9月27日、東京大学農学部との共同研究で、タイラギの人工授精方法を世界で初めて発見したと発表した。人工受精卵から着底稚貝への生育も確認した。
 生殖巣が成熟した親貝から取り出した卵を、ビタミンAの関連化合物であるレチノイン酸で授精可能な成熟卵にする。安価なレチノイン酸は微量で卵成熟を誘起する。この方法は動物では初めての発見となる。この成果を基に「イノベーション創出強化研究開発推進事業」(農研機構生物系特定産業技術研究支援センター管轄)を活用し、300万個以上のタイラギのふ化幼生の取得に2年続けて成功。今年8月には大分県農林水産研究指導センターの協力で、受精卵からふ化した幼生が着底稚貝まで生育することを確認した。
 今回開発したふ化幼生の大量生産技術は、人工授精の作業が既存の種苗生産施設内で無理なく利用できる。高確率で受精卵が得られることで、養成する親貝の数が少量で済み、種苗生産現場の負担減につながる。特定の親貝同士を掛け合わせることができるため、タイラギの育種の可能性が開かれる。
 水産機構増養殖研究所養殖システム研究センターの松本才絵氏は「レチノイン酸による卵成熟の誘起は、ほかの貝にも応用できる可能性がある」と述べ、「タイラギの育種も進めたい」と展望を語る。[....]