[924]ソマリア沖の海賊問題の現状と農林水産省の取組みについて

2012年6月12日

国際商業会議所(ICC)の国際海事局(IMB)が1月19日に発表した年次報告書(速報)によると、2011年に世界で発生した海賊等事案の件数は439件でした。

このうち、ソマリアの海賊によるものと推測される海賊等被害件数は237件と、10年に比べ18件増加しましたが、ハイジャックされた船舶隻数は28隻と、10年に比べ21隻減少しました。これは、各国海軍によるパトロールと商船の防衛策の成果によるものです。

しかしながら、ソマリアの海賊により、470人の船員が人質となり、8人が殺害されています。11年の被害地域の内訳は、アラビア海を含むソマリア沖で 160件、アデン湾で37件、紅海南部で39件、オマーンで1件となっています。これら海賊事案の発生状況は、海上保安庁が発する「航行警報」により知ることができます。

海賊は主に小銃や携帯型ロケットランチャーで武装し、高速ボート数隻で貨物船・タンカーを襲撃し乗っ取りをしています。速度が出るように改造された小型の漁船が用いられることもあるため、漁船と海賊船の区別がしにくいうえに、官憲に拘束された際に海賊が漁師を自称することもあります。

さらに、マグロ漁を行っていた台湾の漁船が海賊に乗っ取られ、それらの漁船が海賊行為に使用される事件も発生しています。

日本関係船舶(日本籍船および日本の船舶運航事業者が運航する外国籍船)で、11年に海賊の被害を受けた船舶は11件、うちインド洋は2件ありました。幸いなことに、わが国漁船の被害はこれまでのところありませんが、このような状況を踏まえ、農林水産省においては傘下漁業者に対して安全操業の徹底を図るよう、指導を実施しています。加えて、わが国漁船の周辺水域で海賊発生の情報があれば、漁業者の所属団体を通じ注意喚起を行うとともに避航を勧めているところです。

(水産庁漁業調整課)