運動会とイセエビ

2016年10月14日

 まさかそんな。しかし、答志の運動会ではそのまさかがある。

 運動会のお弁当のおかずといえば、鶏のから揚げ、ウインナー、卵焼きと相場が決まっている。そこにイセエビがあったなら。私はそれを知った時に、なぜか「セーラー服と機関銃」を思い出した。この最も似つかわしくない取り合わせで大衆の関心を引き、そのまさかの期待に応えるあの映画である。

 超高級といえるイセエビを食する場所としていちばん似つかわしくないのが運動会。仮に都会であったなら、間違いなく周りから羨(せん)望と嫉妬の入り混じった視線を浴び、その子供はいじめの対象になるであろう。

 しかし、これはたまたまイセエビ漁の解禁と運動会が同じ時期にあたり、出荷できない傷物をおかずにしただけのこと。地域の事情が分かれば別に驚くことではないので、ご安心を。

 ところで先般、運動会が開催されたが、残念ながらその感動の場面に出会えなかった。近年この傾向が続いているそうで、それは「敬老の日」の3連休と9月16日の解禁日(水揚げは17日)との関連にあった。

 運動会はこのうちの土曜日に開催され、その年のカレンダーにもよるが、運動会前にイセエビ漁が始まるタイミングが少なくなったためらしい。残念ながら、その場面はいつも見られるわけではないが、答志の誇るべき食文化(?)として、ぜひとも後世に残していただきたいものである。

 話は変わるが、答志の人はカツオが大好き。漁協直販課が時々漁連を通じ取り寄せ、町内のスピーカーで案内すると、何十人もの人が買いに来る。カツオよりはるかに高価な高級魚をいつも獲って来る漁業者に「なぜ?」と聞いたら「答志にないから」。

 親がカツオを買って帰ると、家族が「わーい、今夜はカツオだ」と喜んだとも。熊野ではごく普通の魚なのに地域で獲れないだけでこんなに評価が違うものかと、おかしさを感じる。