納税の自由

2017年9月29日

 憲法には「納税の義務」がある。それを「税金を払うかどうかは国民の自由意志に委ねよ」と改正を主張する政党が現れたら、国民はどう思うか。多くは「そんなバカな、国がつぶれる」と思うだろうが、かならず一部には「やったー、俺は払わん」が出てこよう。

 最近、JC総研(各種協同組合に関する調査研究を行う総合研究所)の公開研究会に参加し、公正取引委員会(公取)が全国各地で農協に「系統利用(販売、購買事業など)を強制してはならない」と警告している深刻な事態を知って驚いた。もちろん目的は官邸の農業改革を忖(そん)度した農協つぶしである。

 私が研究会に参加した目的は、鳥羽磯部漁協答志支所の生産金額が、合併後13年間で165%にも増加した理由は「系統利用という組合の掟(おきて)を厳守させる協同精神」にあることを紹介するためだった。残念ながら、当漁協のある支所では、組合員が共販を通さず手数料の負担を免れるなどで、合併以来1億円近い累積赤字を積み上げ、答志支所の累積黒字2億3000万円を食いつぶしている状況がある。堪忍袋の緒が切れ始めたので、その是正に取り組もうとする矢先に、漁協にも公取が入るとなるとこれは大変なことになると思った。

 零細な漁業者が大手企業に対抗するために団結することが組合の本質なのに、その事業利用を自由意思に任せろということは、根本的に矛盾している。テレビで牛乳農家が共販から離脱してもその出荷量に係る手数料を組合に払うのはおかしいと言っていた。だったらなぜ組合から脱退しないのかと思ったら、ちゃっかりと共同利用施設だけは使いたいからのよう。公取は組合維持のための税金ともいえる共販手数料は払わず、おいしいところだけはいただきますの自分ファースト組合員を増やしたいらしい。

 国(組合)を亡ぼすのに鉄砲はいらぬ「納税(系統利用)の自由」さえあればよい、とは全く汚いやり方である。