移住定住?

2018年4月12日

 漁業版ワーキングホリデー「結(ゆい)」の中で、鳥羽市の委託事業「移住定住体験ツアー(以下ツアー)」への参加者も昨年度から受け入れている。何と昨年参加した愛知県の高校生が卒業後、その時の受け入れ漁家のところで漁師になるため4月から移住してきた。人口減少が進む離島にとって1年目からこんな成果が出るなんて本当にありがたい。

 しかしその一方で、ツアー受け入れを2年経験し「どうもこれはおかしい」と首をかしげざるを得ないことも生じてきた。それは昨年から薄々感じていたことであるが、ツアー参加者の中には全く移住定住する気はなく、単にツアーに参加することを目的にしていると思わざるを得ない方がいること。

 特に家族での参加者は旅館の宿泊費は無料になるし、子供さんには普通ではめったにできない漁業体験をさせることもできる。見方を変えれば春休みを利用した最高の格安家族旅行なのである。もちろん家族で移住されてきた例もあるので全面的に否定しないが、この2年の例では移住定住しようなどという気が全く感じられなかった。単身で参加する若い男性においても目的が移住定住ではなく、漁業体験そのものを趣味にしているのではないかという方も混じっていた。「結」コースは、本当に役立って歓迎されているが、短期間滞在でかえって作業効率が落ちるツアーの方は来年から受け入れ漁家がいなくなりそうである。

 どうしてこんなことが起こるのか。おそらく人口減少に悩むどこの自治体もその対策に懸命であるが、そう簡単には応募者は集まらない。だから申し込みがあれば、その気があるとの前提で受け入れる。参加者が本気であれば結果が出なくてもやむを得ないが、これを悪用されると、地元民の期待を初めから裏切るものになってしまう。それを防ぐには自治体間で参加者の「名寄せ」を行い、常習者にはやんわりとお断りする。それしかないかと思う。