独法化生かし研究専念

2019年11月5日

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青森県の漁獲量と漁獲金額の推移(属人)・県統計

 グラフは1989(平成元)年から30年間の青森県の主な魚種ごとの漁獲量と県全体の漁獲金額の推移です。青森県全体の漁獲量は89年に77万でスタートし、2013年には18万トンで最低を記録しました。漁獲金額は1991年に1053億円で最高、2012年に443億円で最低となり、16年にはホタテの価格上昇により628億円を記録しました。

 魚種ごとにみると、平成時代は全漁獲量の49%を占めるマイワシ38万とスルメイカ15万トンでスタートし、マイワシは08年に1万分の1以下の31に、スルメイカは18年に8%の1・2万まで減少しました。サバ類は1993年に13・8万、サケは96年に1・2万トンと、それぞれ平成初期に最も多く漁獲されました。一方、ホタテは2016年が12・2万と過去最高を記録しました。

 青森県の漁業生産は、大中型まき網、沖合底びき網、大中型イカ釣りなどの沖合漁業、定置網、一本釣り、刺網などの沿岸漁業、ホタテ養殖業、さらに小川原湖、十三湖でのシジミを主体とした内水面漁業と、多様な漁業によって行われています。急激に減少する水産資源と多様な漁業を抱える青森県の水産業を支え、さらに「水産改革」に対応するため、試験研究の重要性は一層高まっています。

 09年4月に青森県の工業、農林、水産、食品のすべての試験研究機関は、地方独立政法人化し、青森県産業技術センター(以下青森産技)としてスタートしました。それまで、工業系や農林系の地方独立法人化はありましたが、水産系の独法化は全国で初めてのケースで、注目を浴びました。その後、5年ごとの中期計画に基づき研究を行い、今年19年4月に第3期中期計画がスタートしました。独法化のメリット、デメリットについては時折、照会があります。ここでは「人と予算」について紹介します。

 現在、水産部門の研究職員28人中23人がプロパー職員、5人が県からの派遣職員で、プロパー職員の割合は82%です。ほとんどの県で、水産系職員は人事異動により、行政機関、普及機関、試験研究機関で人事異動があります。一方、青森県では、独法化により、研究職員の異動は少なくなり、よくいえば「じっくり腰を据えて研究に専念できる」体制となっています。

 ある研究集会に出席した際、隣り合わせた大学の先生から、「青森産技はフットワークが軽いね」と言われました。研究所の予算は、大半が県からの交付金で賄われていますが、外部資金による研究費の獲得も求められます。県組織の場合、予算計上は水産部局、財政部局、議会での決議の手続きを必要と
し、場合によっては数か月を要します。

 そのため、国や大学から「共同研究のお誘い」があった場合、県時代は容易に回答ができませんでした。

 一方、青森産技の予算は理事会もしくは理事長の先決で決定されることから、研究予算の受け入れ手続きは格段に速くなりました。独法化の大きなメリットです。 「水産改革」により、水産資源の資源管理が重要視されるとともに、新たな養殖技術開発など、試験研究機関には多くのことが求められます。独法化のメリットを最大限に生かし、スピーディーに課題解決を進めたいと考えています。