漁業版ワーキングホリデー

2016年12月14日

 本連載16回で紹介した「結(ゆい)」と名付けたワーキングホリデー(WH)を、いよいよ本格的に開始することになり、ホームページ(検索:結鳥羽磯部)を開設した。

 三重県に来て以来、やりたかったことがようやく実現した。正直に言って私の漁業現場での手伝いなど「いなくても困らない」程度しか役に立っていなかったので、私がいたからこそ実現したという何かをやりたかったからである。
 それが都会の高齢者にワカメ加工作業の手伝いをしてもらうWHであった。農業WHはすでに多くの事例があり大いに農業に貢献しているが、漁業では初めてと思う。

 漁業になかった理由は、私が長野県飯田市の農業WHに参加してみて分かったが、農業と漁業では居住環境と作業内容が大きく異なるから。今回の答志島和具浦支所のワカメ養殖は、何とか条件が揃ったので入り口にたどり着けた。さてうまくいくだろうか。これはやってみるしかない。

 いつも漁業者を見て思うことがある。この人たちは、誰からも指図されることなく、昔からのやり方で黙々と日々働いている。そこに外から何か新しいことを持ち込むのは至難の業であると。

 政治の世界では「改革」の押しつけが続いているが、そんな能書きでこの世が簡単に変わるとは思えない。権力には面と向かって逆らわず、改革も一応受け入れるが、時間をかけてそれを骨抜きにする。それが現場で働く人々の知恵という気がする。

 では何も変わらないのかというと決してそうではない、突然豹(ひょう)変することもある。鳥羽磯部漁協のノリの加工委託施設で答志支所が成功したら、そっぽを向いていたほかの支所が「ぜひやりたい」となったのが好事例。理屈だけでは変わろうとしないこの保守性こそが、創造的破壊と称し何も創造しない改革だらけの今の社会の安定に必要と思う。「結」も結果を出し、全国の漁業者に広まるよう努力していきたい。