漁業法の目的

2018年10月12日

 度重なる台風の襲来で、今度は答志支所の建物の屋根が破損した。私はマグロ養殖会社の役員もしており、そのたびに被害が心配になるが、こんなことが今後も続くと日本では魚類養殖そのものが縮小し、成長産業化どころではなくなる。

 しかし、それ以上に日本漁業に大被害を与えるのが水産政策改革という人災である。その関連法制度の説明会でついにその狙いが明確になった。国はそれまでの説明を撤回し、漁業法第1条の目的を68年ぶりに改正するとしたのである。法律の目的とは「立法目的を簡潔に表現したもので、その法令の他の条文の解釈にも役立たせる」という趣旨で設けられるもので、まさに法律の顔であり魂でもある。

 国の案で現行法から削除されたのは「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用」「漁業の民主化」、追加されたのは「漁業の国民に対する水産物の供給使命」「水産資源保存管理のための措置」「水産資源の持続的利用確保」、残ったのは「水面の総合的利用」「漁業生産力の発展」だけである。漁業者の意見を一切聞かず、規制改革の議論をもとにした改革案に沿って、しかも一部改正法でその法律の根幹である目的を全面的に改正するなど前代未聞と思う。

 削除内容は、世界からも高く評価されている日本の宝のコモンズ(共有資源)の利害関係者による自主管理をどぶに捨てるものであり、民主化の否定で民(漁協)から官(知事)に海の利用に関する調整権限を取り上げ、戦前のように一部有力漁業者(今後は参入企業)による独占的・硬直的な海の利用へと回帰させるもの。また追加内容は改革に適応していない。改革では輸出強化はあるが国内供給強化については特にない。漁獲可能量(TAC)、個別割当(IQ)の拡大はTAC法の対象であり漁業法に関係ない。余計なことを追加せず、削除した部分を「知事の独裁的調整機構」「漁業の官主化」に改正すれば事足りるかと。