消費期限切れ改革

2018年7月18日

 「水産政策改革」に対する日経と読売の社説を読んで、財界の視点での評価とはこういうものかとそのキーワードを連ねてみた。善とするのは「企業、生産性、競争、規模拡大、開放、参入、自由、ノルウェー、成長、一人当たり生産量、輸出」。悪とするのは「地域、漁協、漁業権、行使料、コスト、細分化、優先権、既得権、小規模、旧弊」である。この社説を読んで財界の狙い「企業・利益独占万歳! 漁協・地域共生粉砕!」を改めて再認識させられた次第。

 それにしても善とするキーワードに全く新鮮味が感じられないのはなぜだろうか。それはもう30年も前から続く新自由主義的経済改革路線で散々使い古された「耳タコ」ワードだから。つい先日政府が有効求人倍率が44年ぶりの高水準と自慢げに発表したが、ではなぜ賃金は増えないのか。それはこの改革路線が低賃金の職場を増やしただけの結果に終わったから。財界のいう「生産性」や「競争」とは「賃金低下」と同意語。そんな企業が漁村に参入すれば自分は「成長産業化」しても、漁業者所得は増加しないことはもう明白。

 水産政策改革は、宮城県水産特区の惨状をみるまでもなく必ず失敗する。それは世界でこの改革路線の先頭を走ってきた英国や米国で起こった政策転換からも分かる。欧州連合(EU)離脱での「バック・トゥ・ザ・コントロール」やトランプ大統領を生んだ「アメリカファースト」のスローガンには、社説が悪とするキーワード「地域」の価値観を取り戻そうという逆向きの潮流がみてとれる。

 賞味期限どころか、腹痛続出で食べたらあたる?消費期限?も切れた改革路線を、嫌がるJAの口に力で無理やり押し込んだように、漁業にも同じことをやろうとしている。安倍一強体制におびえ誰も本当のことを言わないが、明治の海面官有宣言をみても権力で漁業現場が変えられた事例は歴史上一度もない。それができるのは漁業者だけ。現場にいるとつくづくそう思う。