水産庁を答志島へ

2016年6月29日

 本紙6月13日付の「水産庁を宮城県に移転(時事)」には驚いた。エープリルフールのジョークでもなく、河野太郎行政改革担当大臣が講演でそういったという。東日本大震災の復興支援の狙いもあるとしているが、やはり水産県でもあるからだろう。なら、答志島も水産が盛んで離島振興という国策にもかなうことから、ぜひ「水産庁は答志島へ」と誘致合戦に参画しなければ。

 それにしても、日本文化の中心地の京都に文化庁など、その理由は単純明快である。そこで、私も河野大臣になったつもりで中央省庁の移転先を考えた。

 農林水産省の本体は何といってもコメの大産地、新潟県の平野部に。林野庁は林業産出額1位の長野県木曽の山奥に。環境省は自然豊かな知床半島に。文部科学省は種子島宇宙センターのそばに。厚生労働省は一人当たり医療費がトップの山口県に、安倍晋三首相も歓迎するだろう。警察庁は日本最大の暴力団の本部がある神戸市に。それから外務省は思い切ってワシントンがよい。いちいちおうかがいを立てるのに便利だから。なお、官邸は最大の課題である米軍基地の移転問題が解決するまで沖縄県辺野古になろうか。

 冗談はこのくらいにするが、冗談ではないのが「行政改革」という錦の御旗にだれも反対できず、おかしなこともまかり通ってしまう今の世相。

 やるべきことは地方の産業をどう再生するかであり、中央省庁の一部を移転して、どの程度の効果があるというのだろうか。水産庁には国際関係の仕事があり、海をめぐる関係省庁との折衝も多い。全国から出張してくる漁業関係者には東京がいちばん便利。地方移転となれば、交通手段の不便さから金銭や時間の面で負担が増すだろう。TPPに参加し、地方と第一次産業をより衰退させる一方で、東京一極是正という施策の中身が、逆に水産業を衰退させかねないものしかないのかと悲しくなってしまう。

 忘れていたが、河野大臣の移転先は南極がよい。私も行ったことがあるが、頭を冷やすには絶好の地である。