書き換え「信じられない」

2018年3月28日

 森友学園への国有地売却に関し決裁文書が書き換えられていたことが発覚し大問題となっている。私は冗談半分で漁業者に「役人は悪いことをしない限りクビにはなりませんが、悪いことをしないと出世できないんですよ」と言うが、まさに今回の佐川宣寿前国税庁長官にはぴったりである。これは公金を横領したことが見つかりそうになり、個人で書類を書き換えることとはわけが違う組織的な違法行為。本来なら絶対に誰かが「そんなことができますか!」と拒否するはず。それを誰も反対しなかったことは役人OBの私としても信じられないことである。

 私は水産庁の資源管理推進室長をしていた時に、課長から「部長会議で個別割当(IQ)制度の導入について検討することになった」との指示を受け「そんな簡単にごまかせ、正直者がバカをみて、いずれ漁業者全員を犯罪人に仕立て上げるようなIQは、私が室長である限り絶対にやりません」と拒否した。もちろんあっという間に異動させられたが、そんな悪事に加担することなく役人人生を終えることができたのは今でもよかったと思っている。今回の決裁文書書き換えを指示された近畿財務局の職員が自殺したが、なぜ公務員は法律で守られているのかその原点を忘れなければ、上司の指示を拒否できたのにと残念でならない。

 最近の中央省庁は本当におかしい。裁量労働制導入に関する厚生労働省のデータ捏(ねつ)造問題や、加計学園問題を抱えた文部科学省による前川喜平前事務次官の授業内容の報告や録音データ要求など。私にはいずれも担当職員が自主的にやったこととは思えない。そこに透けてみえるのは何らかの外部からの指示である。それに逆らえないのは、中央省庁の幹部職員の人事権を握った内閣人事局の力なのであろうか。一部の報道では農林水産省の事務次官人事も官邸主導で行われたという。漁業をめぐる規制改革への危機感が高まらずにいられない。