市場もいろいろ(前篇)

2013年11月22日

 鳥羽に引っ越したあとも、JF熊野漁協の顧問を続け、片道2時間かけて毎月の理事会に出席している。熊野漁協では、今年9月に初の漁協直売店がオープンし、また、来年開設予定の衛生管理型の新市場を建設中である。このため「市場業務の見直し」が理事会での検討課題となっている。今回それに参画できることに、特別のワクワク感をもっている。というのは、次の2つの理由からである。

 一つ目は、水産庁の指導室長の時、全国の合併漁協の業務分析をしたが、購買や共済事業は生産性が上がるのに、販売事業は従来のままなのが不思議でしょうがなく、今回その謎に迫れるかもしれないと思ったから。
 二つ目は、熊野漁協は、借金もなく全体としては黒字経営を続けているが、販売事業部門は赤字。全国的にみれば、販売事業は黒字で、ほかの事業部門の赤字を補填しているのが一般的。なぜ熊野漁協は赤字なのか。私は、身をもって現場を経験することで、その要因を見つけることができるかもしれないと、今年5月末から約3か月弱、市場業務を手伝った。

 漁協のコストの約65%が人件費なので、おそらく人が多すぎるのではないかと見当はつけていた。しかし、初めて経験する市場業務は、めちゃくちゃに忙しく、職員が懸命に働いているのに、人が足りないほどであった。一体何が赤字の要因か、十分な解明はできないままに終わったが、現場作業を経験したこともあり、ますます興味が深まった。

 そこで、鳥羽に来てからも、ほかのやり方を見たいと、JF鳥羽磯部漁協の石鏡支所の市場業務を見学した。そこで見たことは、「エー、こんなやり方もあったのか!」と、思わず膝を打つほどの驚きであった。と同時に、熊野漁協のやり方ではなぜ赤字になるのかも一瞬にして謎が解けた。