島ゆえの強み

2016年9月29日

 答志支所の水揚金額は年々増加してきており、一昨年度は過去最高に達した。日本全体ではピーク時から半減している中、なぜ答志の漁業は元気なのか。その要因の一つに気付かされたのは、伊勢湾内のJF鈴鹿市漁協の組合長との会話からであった。

 ご本人も同漁業に船頭として乗り込んでいる組合長いわく「答志のバッチ・船びき網漁船に女性が乗っているのには驚く」とのこと。そんなの答志では常識。なのになぜ。実は同漁業は伊勢湾内の主力漁業で三重、愛知の各地にあるが、漁労作業の厳しさから、乗組員は男性だけでかつ雇用者が多いのである。

 うちでは乗組員3人の3家族を食べさせていかなければならないが、答志は1家族だけで済むのだからすごいとのこと。なら「組合長も奥さんを乗せたらどうですか」というと、「そんなの無理、地元には女性が簡単に稼げる仕事がいくらでもあり誰も乗らない」とのこと。確かに、答志の奥さんに聞いたら「好きで乗っているわけではない、島には仕事場がないから仕方なく」と言っていた。

 まさに、この「島ゆえに仕方がない」のが、逆に答志漁業の強みでないだろうか。漁業には好不漁がつきもので、不漁が続いた時の雇用乗組員に対する固定給は経営の大きな負担となる。同じ屋根のもとに住み、ご飯さえ食べさせれば済むのとは違う。他地域の同漁業がそれゆえに少しずつ撤退しても、答志漁船はそこを耐え抜いて空いた漁場が利用でき、水揚げを増やすことができているのではないだろうか。

 先般、このことを他地区の漁業者がうらやましがっていたと答志の漁業者に話したら「それゆえの悩みもある。沖でも家でも女房にお世話になっており、頭が上がらない。本当は一人で魚を獲って来て、どうだ!俺が食わせてやっているんだぞーと威張ってみたい」とのことであった。いつも市場の前を出入りする漁船には、船頭と奥さんとその姉の3人で乗っており、島ゆえとはいえ男と同等に働く女性のがんばりには感心せざるを得ない。