太陽光発電考

2018年5月24日

 身近に起こって初めて気付いたこと、それが太陽光発電のためのソーラーパネル設置が起こす環境問題。田舎の道を走っていると道路脇に結構な数のパネルが設置されているのを見る。温暖化対策や自主エネルギーの確保の点で大いに結構と思うが、それが休耕田を利用したらしき場所にあると「エネルギーか食料かの究極の選択を迫られた時には悩ましいなー」くらいの認識しか私にはなかった。

 ところが、数年前に鳥羽市内の観光地で山肌が突然むき出しになったことを契機に、悩ましいどころの問題ではないことに気付いた。周辺住民はホテルでも建つのかと思ったらしいが、それがパネルの設置のためだったのである。観光が基幹産業で景観第一のはずの鳥羽市内のいちばん目立つところにそんなものをと観光業者は反対したが、市の回答は「何もできない」だった。

 大規模パネル設置による周辺環境への影響は種々指摘されており、自治体によっては一定規模以上についての条例などがあるが、基本的に規制の法律がなく環境アセスメントも地域住民への説明も不要らしい。それにしても観光地のど真ん中にわざわざ造るのは「環境にやさしいエネルギー」をお題目にした規制の甘さを逆手に取り、後日宅地にして転売でもするのではないかと疑いたくなった。

 そしてついに恐れていたことが、JF鳥羽磯部漁協管内で起こり始めた。近年価格が高騰し、沿岸漁業者の重要な収入源となったアオノリの養殖場がその真下に広がる海岸線の崖の上に大規模なパネルの設置計画が持ち上がったのである。もちろん地元漁業者は、そこからの土砂の流出などの悪影響を恐れ大反対であるが、なすすべがない状態。海岸線の自然保護は魚付き保安林というものがあるくらい大切なことで、原則開発禁止にしてもらいたい。「環境にやさしい」はずの太陽光発電による「環境にやさしくない」行為は何とかならないかと思う。