偶然のありがたさ

2019年7月19日

 毎年、加工作業のお手伝いをしている答志島の和具浦のワカメが日本発のエコラベルであるマリン・エコラベル・ジャパン(MEL)の認証を取得できることになった。しかも調べた範囲ではワカメでのエコラベルは世界初のようである。和具浦の塩蔵ワカメの出荷量は、輸入物も含めた国内流通量の0・1%しかなく、ほかの国内主要産地に比較しても極めて少ないにもかかわらず、どうしてそうなったのか。

 そのきっかけは、エコラベルの価値を認識していたという理由からではなく、まさに「偶然」としかいえない出来事が重なったこと。ちょうど1年前、漁師が浜でビールを飲み交わしていたところに、女性の旅行者が近付いてきた。あれこれ談笑していると、その女性が食文化普及関係のNPO法人の代表であることが分かり、「エコラベルがないワカメはこの先スーパーで売ってもらえなくなるよ」と脅されたのである。私は後日それを聞き「そんなことになればスーパーでは売るワカメがなくなる」と答えたが、心配になった一人の漁業者が漁の合間にエコラベルの審査機関に直接電話していることなどを聞き「それでは私が調べてみましょう」と引き受けることになった。

 その後、認証要件を満たせるのではという見通しがついた時に、全養殖漁家を集めてエコラベルを取りに行くかどうかを決めることになった。日本における多くの漁業者のエコラベルへの認識は「そんな面倒なことをしてお金まで払っても、消費者に評価されない」と聞いていたが、集会では「やろう」との意見が多数だった。それも偶然であるが、昨年の「トロさわら」のブランド化が魚価上昇に確実につながったことを実感していたからだと思う。

 エコとブランドは意味が違う。エコだけでは日本人は買わないと思う。エコで引き付け味でつなぐ。味に絶対の自信がある和具浦ワカメの宣伝文句は「おいしくなければエコでない」に決まり。