令和の未来は明るい?

2019年5月23日

 前回の連載で経団連会長の「終身雇用は守れない」発言に触れたが、その後も示し合わせたように財界人から同様の発言が続く。中でもトヨタ自動車の豊田章男社長が2018年度決算発表で「日本の企業としては初めて売上高が30兆円を超え過去最高となった」としたあとに「終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきた」と発言したのには驚いた。しかも、役員報酬は増額すると言ったその同じ口から。

 トヨタがこれでは日本の全企業が、終身雇用は守れないと宣言したのに等しい。そこで公務員も同じになったらどうなるかと、自分の経験を踏まえ、シミュレーションしてみた。まず就職初日からのいちばんの関心事は、目先の仕事よりも将来の「再就職先の確保」。次に給料の分だけ働き、徹夜続きの予算や国会対策などやらず、終業時間になったらさっさと帰る。さらに自己防衛のために間違いなく持ち家は諦めただろう。子供が大学に進学しいちばん金がかかる年代で解雇される確率が高いとなれば、結婚すら躊躇(ちゅうちょ)したかも。これでは労働意欲が減退し、モノは売れず、一層の人口減少社会となるのは必至。

 働く者に冷たい令和の時代の若者はかわいそうと思うが、そうでもないらしい。安倍晋三首相の改元の談話では「抵抗勢力もいたが若い世代は改革を前向きにとらえている。次の時代は、夢や希望に向けてがんばっていける、未来は明るい」とあった。若い世代はいつクビにされるか分からない改革を前向きに「未来は明るい」ととらえているらしい。

 企業が成長するほど、雇用条件の劣化が進むのでは、企業の社会的責任(CSR)の根幹が崩壊し始めたといえる。そのような企業に漁場と資源を漁民から取り上げ移転させることで漁業の成長産業化を図るのが今回の漁業法改定の目的。参入企業に雇われるしか生きる道がない地元漁民の「未来は明るい」とは到底ならないと思わざるを得ない。