不戦勝?不戦敗?

2018年8月14日

 8月2日付の本紙「宮城県水産特区適用者不在に」の記事を読んで、正直どう受け止めたらよいのかと考え込んでしまった。前回の免許時は、JFみやぎ(JF)と桃浦かき生産者合同会社(会社)との競願となったため、通常であれば優先順位によりJFに免許となるところ、特区法によりそれが適用されず会社に免許がされた。ところが、今回はJFが申請しなかったことから競願にならず、特区法ではなく漁業法により会社に免許されることになったとのこと。JFが申請しなかった理由は「特区そのものには反対するが、合同会社が従来通り操業することに特段の反対理由はない」(8月2日河北新報)から。

 JFが競願をかけなかったことで、結果的に漁業者大反対の特区法の出番がなかったことから「不戦勝」といえなくもないが、地元事情に疎い私が言う失礼を重々承知のうえであるが、やはりこれは「不戦敗」に近い気がする。

 というのは、JFが申請しないことで、その周辺のカキ養殖場はすべて組合管理漁業権のもとにありながら、会社だけがぽっかりと経営者免許漁業権で免許されることを実質上容認したことになるから。これはJFによる養殖漁場の一体的管理の重要性に関する従来からの主張に反しており、今まさに水産政策改革が狙う組合管理漁業権を廃止し、知事による経営者免許漁業権に移行させる制度改悪の先行事例となってしまわないかと危惧されるからである。

 一方、逆の事例が私の身近にある。前回の免許更新時に水産庁の「技術的助言」に従った県庁の指示により、組合管理下にあった大手企業傘下のマグロ養殖場が、経営者免許漁業権に移行させられたが、今回それを元に戻すことになった。それは組合を飛び越して知事直結では、安定的経営に不可欠な地元との協調体制の維持に支障を来しかねないとの認識が会社と組合との間で一致したから。ぜひ宮城県もそうなってほしい。