丁寧な(無回答)説明

2018年8月30日

 「関係団体等に丁寧に説明を行い、理解を得ながら進めていきたい」とは、齋藤健農林水産大臣が水産政策改革について2018年6月1日の記者会見で発言されたお言葉。それを信じて大臣あての質問書を、漁協理事会の承認を得て組合長名で16日に提出した。その理由は、短時間の説明会では一般論的な説明で終わる可能性が高いと思い、当漁協の現場の実態に当てはめた改革案の具体的解釈について、文書での回答を望んだためである。その回答期限を水産庁主催の説明会最終日の7月3日とさせていただいたが、8月20日現在になっても何の回答もない。

 この「丁寧な(無回答)説明」には大いに落胆した。というのはこれまで私は、規制改革の意向に沿った事実に基づかない日本漁業批判が報道された際に、JR東海(掲載雑誌の親会社)やNHKに質問状を送り付け、中身は別にしてもきちんと回答を得ていたからである。農水省にとって漁協とは回答すら必要のない存在だったのである。

 ところで、説明会で出た多くの質問への明確な回答はいつになったら得られるのか。知る限り水産庁のホームページにあるQ&A(7月20日)と長官説明動画(8月13日)しかないが、その内容もあいまい。例えば100人が組合管理漁業権のもと養殖しており、その中の1人が経営者免許漁業権を望んだ時にどうなるのかについては「漁場を細かく区切るような事態が生じないように都道府県が適切に判断できるような考え方を示す」と回答しているが、その適切に判断する基準は示されていない。1企業が望めば残る99漁業者の区画とは「細かく」ではなく、2つに「大まかに」区切られているのでOKという判断基準を土壇場で示すに決まっている。そこで慌てても、もう遅い。身勝手な1企業に習いわれもわれもとなり、99漁業者間の漁場秩序も必ず崩壊し始める。だから今、その丁寧な説明が求められている。