一流企業の不祥事

2018年11月28日

 安倍晋三首相は臨時国会の所信表明演説で「漁業権の新たな付与について、法律で優先順位を定めた現行制度を廃止し、養殖業の新規参入、規模拡大を促してまいります」と述べた。要するに漁業者から漁場を取り上げ、企業に渡し漁業の成長産業化を図るというものだが、その企業、しかも一流どころの不祥事がどうしてこうも続くのか。最近だけでも、免震ゴムのデータ偽装、自動車会社の燃費データ改ざん、無資格検査問題、製鉄所の強度試験結果の改ざんなど。それを監督する立場の政府がモリカケ問題で、率先して「うそ、隠蔽(ぺい)、捏(ねつ)造」を乱発したのを見習ったのであろうか。

 不祥事が続く理由について、あるブログを読んでいたら「コストカッターだなんだといって、社外から社長がやってくる」「会社経営能力はあっても、会社のことがよく分かっていない、現場で何が起きているかも分からない、知識も技術ももたない人に、方針を変えたからと言われ押し付けられる」とあり、ひどく納得した。これって、確かに企業経営の能力はあるかもしれないが、水産のど素人である規制改革推進会議の委員が押し付けてきた水産政策改革の構図そのものではないかと。

 改正法案においてそれが如実に表れているのが、漁業許可における適格要件。今までは「漁業を営むに足りる資本その他の経理的基礎を有すること」であったが、今後はそれでは足りず「漁業を適確に営むに足りる生産性を有すること」に修正された。この「生産性」とは、日本の漁業者をどんどん減らし、一人当たりの漁獲量を増やす利益第一主義のノルウェー型漁業に移行させようとするものであるが、そんなことをされると参入企業のミニ・カルロス・ゴーンさんは喜んでも、漁業者や漁村はますます疲弊してしまう。だからこのまま法案が通ると漁業現場では「生産性をごまかす不祥事」が多発し、その点においては一流企業並みになるというわけ。