ロボットよ楽しい仕事を奪うな

2017年4月11日

 前から思うことだが、科学技術が進歩し、例えばロボットが何でもやってくれるようになれば人間は幸せになるのか。私は今回の結(ゆい)参加者アンケートを見て、ロボットにさせてはいけない作業もあると強く思った。それは「単純な手作業」である。えー、逆でしょう? と思われるかもしれないが、その理由は次の通り。

 ワカメ作業へのアンケートでは、意外にも「簡単だった」が多く、「楽しかった」「面白かった」がほとんどであった。

 女性週刊誌の20代の女性記者が取材に来た。ちょうど参加者に60代後半の女性2人がいたので、一緒に作業体験をしてもらった。帰る定期便の時間が近づいたので作業小屋に迎えに行ったら、塩ワカメの茎抜き作業に真剣な表情で取り組み中で「面白くなったのでぎりぎりまでやりたい」となった。

 一体ワカメ作業の何が素人を引き付けるのか。もちろんプロとはそのスピードも正確性も比較にならない。しかし、誰にでもでき、1時間もすれば慣れてくる。そして同じ仕事をする人々に囲まれた中に自分がいる。おそらくここに都会では味わえない日本人の共同作業の原風景を感じたのではないだろうか。私が漁村に移り住み、簡単な作業の手伝いをしていても飽きることがないのは、そのためかもしれない。

 今、自動運転車や人工知能(AI)により人間の仕事を機械に置き換える技術開発が盛んに行われている。「〇〇とハサミ」ではないが、それは使いようであり全面的に否定はしない。危険な仕事や重労働はできる限り機械化した方がよい。

 しかし、経済効率至上主義の下では、確実に雇用の減少を招き、一層の格差拡大につながるだろう。また、仕事をロボットに任せて人間は一日中遊びまわれば、それで幸せだろうか。いや、仕事のすべてが苦役ではなく、仕事そのものに楽しさもある。ワカメ作業はそのことを都会の人に教えてくれる。