スタイルがよすぎて

2015年9月9日

 答志町には若い漁師が多く、かつて高齢者ばかりの漁村にいた時に見慣れた映像感覚と比較し、明らかに身長が高い。

 午前中の限られた時間帯に何十隻もの船が市場に活魚を揚げに来るが、その中に30代半ばと思われる若いご夫婦がおられる。ご主人の方も180センチを超える長身であるが、奥さんの方も170センチ近くあり、そのうえ顔が小さくすらりとしている。しかし、その胴長カッパ姿を見た時、少なからず違和感を覚えた。

 正直にいってスタイルがよすぎて似合わないのである。例えれば、都会にいるファッションモデルを連れて来て、漁師の格好をさせたイメージ。小さくて丸っこくなければ漁師の奥さんではないのか!と、どちらからも抗議されてしまいそうだが、1・5世代くらいの年齢差で日本人の体形はこんなにも変わったのかと感じてしまう。

 答志町の漁業は例外的に今も元気であるが、多くの漁村で水揚げや漁業者が減る中、後継者として若いご夫婦ががんばっている姿を見ると、いつも頭が下がる思いである。

 男の方は「漁師でもやってみるか」で始め、それなりの収入を得たとしても、奥さんがいなければその代で終わり。しかも、沿岸漁業の多くは奥さんも漁に出ることから、家事・育児も抱えた女性の負担の方が大きい。だからこそ、漁師と結婚する決断は、男の何倍も大変だと思う。

 日本の沿岸漁業が将来にわたり持続できるかどうかは、その女性の決断にかかっている。そういう意味で、漁師の若い奥さんを見ると、まるで得難い「宝物」のように見えてきてしまう。

 答志島では熱心なお見合い活動の結果、島外から嫁いできた奥さんも最近増えたそうである。海から遠くかけ離れた山間部出身の女性が、漁に出て地元の女性以上にがんばられている一方、残念ながら再び島から去られる例もあり、現実はそう簡単ではないようである。

 ファッションモデルになる道より、漁師の奥さんになる道を選んでいただいた女性に、何とか報える沿岸漁業にするため、少しでもお手伝いができればと思う今日この頃である。