オリンピック制は都市伝説

2014年3月31日

 「日本漁業はオリンピック制のもとにあり、先取り競争で資源が悪い。IQ(個別割り当て)がこれを解決」と巷間よく聞く。しかし、役人時代には、オリンピック制下にある漁業を具体的にみたことも聞いたこともなかった。そこで、漁業の現場でぜひそれをみてみたいと思ったが、熊野のイセエビ漁はガチガチの規制下にあり、それとは程遠かった。また、冬と夏の熊野灘の棒受網漁業にも体験乗船したが、月齢に合わせ、皆、同じ時間帯に出漁し、沖では仲間と無線で連絡を取り合い、同じころに切り揚げていた。最もそれに近いのではと思ったのは、JF鳥羽磯部漁協安楽島支所でのイセエビ漁であった。当地では、漁場区割りや網数の制限がなく、熊野に比べると極めて自由な操業が認められていたから。しかし、それぞれが自分の都合に合わせた操業をしており、血相を変えてわれ先にと先取り競争をしている場面には出会わなかった。

 本当に、オリンピック制下の漁業は存在するのだろうか。これは「都市伝説」ではないか。ウィキペディアには「口承される噂話のうち、現代発祥のもので、根拠が曖昧・不明であるもの」との解説がある。さらに、その特徴に「嘘でつなぎ合わされた真実」という側面があり、要所要所に事実をはめ込むことにより、真実味を出すとある。

 では冒頭の噂話を、これで検証してみよう。まず、オリンピック制は怪しい。次に、よい資源もあるが、悪い資源もあるので、ここには部分的事実がある。最後のIQであるが、この方法によらずとも資源が改善できることは資源回復計画で実証済みであり、なぜIQでなければならないのかが怪しい。カナダの事例であるが、IQを取り入れたあとも競争はなくならなかったという日本の女性研究者の論文を見た記憶もある。

 いやいや、それでもオリンピック制は真実とおっしゃる方がいれば、ぜひ教えてほしい、いつどこに行けば見られるかを。高いお金をかけて外国に行かなくても、2020年まで待たなくても、オリンピック競技が見られ、金メダリストにも会えるのだから。