「離島」対「過疎地」

2017年2月10日

 答志島に中央官庁のお偉いさんが相次いで視察に来られた。水産庁漁港漁場整備部長と国土交通省離島振興課長である。自分が中央にいた時には分からなかったが、こんな離島まで足を運んでいただき本当にありがたいという地元の気持ちが感じられた。全国多くの視察先から、自分のところが注目されたという意味で素直にうれしいのである。

 視察に合わせ離島振興に関する講演会が開催され、同行の日本離島センターの専務(元国土交通省国土政策局長)の話も聞ける貴重な機会と参加した。私は熊野で消滅寸前の過疎集落も見てきたので、あえて「離島と過疎地の違い」を質問した。やはり離島の方が過疎地より人口減少や高齢化がより厳しく、ハンディは何といっても船で通わなければならないことであるが、同時にメリットも「離島であること」との回答があった。

 理由は「離島」であることが人を呼び込む魅力となるほかに、実は振興策の取り組みの成功率が高いとのことであった。これには激しく納得した。

 私も離島に住んで1年半、つくづく思うのは船に乗って島に帰ると何か世界が変わるような気がするのである。つまりそこは外界から海で隔絶された大きな生活空間であり、船着き場が玄関口で海が鍵の役割を果たしているのである。だからであろうか、私は家に鍵をかけないというより、もともと鍵がないのである。都会と違い留守中の宅配便は勝手に家の中に放り込んで行ってくれるので、再配達を頼む面倒がないのは本当にありがたい。

 離島と過疎地の絶対的な違いは、車を使った外部からの異分子の侵入を心配しなくてよい、その地域全体が信頼できる大きな家族的な人間関係で支えられていることではないか。逆にいえば私は都会に通勤していますので、地元のことには関心ありませんなどという人間は住んでいないのである。

 この離島ゆえの地域共同体の強い連帯感こそが、地域おこしの原動力となり、その成功率が高い理由と思わざるを得ない。