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息子に決めさせろ!

2017年3月8日

 漁協本所に勤務するある若手職員の父も兄も漁師である。その職員から「祖父は絶対に間違っていた」という思いがけない話を聞いて深く考えさせられた。父親が漁師になろうとしていた頃、祖父に「絶対やめろ、魚は減るし安くなる、この先漁業では食っていけない」と、さんざん反対されたそうである。それでも父は漁師になった。では今どうか。決してそうなっていないし、兄も漁業を継いでいる。

 あの頃の親は皆そうだったらしいが、せめて息子に判断を任せていたら、ここまで漁師が減らなかったであろうにと。

 私がカキむきを手伝った漁家のおばあさんもそうだった。息子さんが有名私立大学卒だったので、「一流企業にも就職できたのに、よく漁師になりましたね」と言った途端、日頃温厚なおばあさんが、突然カキむきのメスをテーブルにたたきつけ、「私は絶対反対だったのに、義父が勧めたものだから」と、形相を変えて怒り出したことがある。その孫が最近、都会の工場勤務を辞め、漁業を継いだ。普通なら「よかったですね」と声をかけるところだが、あの時のことが頭をよぎりやめておいた。

 答志支所の中村幸平委員長の息子さんも漁師である。「息子さんに勧めたのですか、それとも反対したのですか」と聞いたことがある。その答えは「『やれ』とも『やるな』とも言わなかった。黙っていたら、息子がやりたいと言うからやらせた」とのこと。それは近くのお寺のお坊さんが「息子に決めさせろ」とよく言っていたからでもあるらしい。
 漁業はもともと厳しい仕事。そのうえ魚が安くなっては、もうこの苦労をさせたくないという当時の親が子を思う気持ちはよく分かる。でも本心ではそうではなかっただろう。

 幸い、長い間漁師を苦しめた輸入魚も減ってきて、浜の感覚では魚価も高値で安定してきたような気がする。これからは親が黙っていても後を継ぐ息子が増えてくると思う。