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官・公・民の理想社会江戸にみる

2017年1月25日

 英国の欧州連合(EU)離脱、トランプ米大統領の誕生で世界は大きく脱「グローバル化」の方向に転換し始めており、それに苦しめられてきた第一次産業に関わる一人としてまことに慶賀に堪えない。では、格差拡大と経済の低迷を招いた「グローバル化」社会の次にくるべき社会をどう描くのか。

 そのヒントが260年間にわたり格差拡大を抑制し経済を安定させた江戸時代にあると思い、いろいろ本を読んでみたら「自治組織を通じた間接統治」こそがその秘訣(けつ)であり、まさに現在の漁業管理制度にその遺産が残っていたことに気が付いた。

 典型的事例は、100万都市江戸の治安、行政、経済施策を南北奉行所のわずか330人の与力・同心で処理していたことである。どうしてそんなことができたのか。それは町役人や問屋株仲間といった自治組織(公)が、公儀(官)から幅広い裁量権を保障されていたからであった。

 特に経済活動の中心にあった問屋株仲間では、商人(私)間の競争による効率化とその社会的責任とのバランスを取るために種々の決め事がなされ、それが官に届けられ守らない者は官により処罰された。まさにこれは漁業者代表で構成された漁業調整委員会が自主的ルールを定め、守らない者には知事により取り締まってもらう「委員会指示制度」と全く同じである。

 今の社会は自分さえもうかればよい「私」と、それに言いなりの「官」だけなので、格差が拡大し経済も低迷したと思う。不足する保育所をつくろうにも住民の反対で進まないのも統治システムに「公」をなくしたためと思う。現代人が抱える多くの悩みも、心理学者アドラーのいう「共同体感覚」が「公」なきゆえに失われたからではないだろうか。

 漁業調整委員会とは、行政組織の中では異例の準立法権を有する特別の機関であり、江戸時代の「公」的役割を担うものである。大切にしなければならないと思う。