信頼するのも時には

2015年12月16日

 熊野の時もそうだったが、漁村の皆さんは単身で自炊の私を哀れんでか、いろいろなものを差し入れてくれる。魚はもちろん、山の畑で作った野菜や、地域のお祭りなどに合わせて作ったおはぎなどいろいろある。皆さんに気にかけてもらい、いつも感謝している。

 先般、名古屋での講演に呼ばれ、帰るのが遅くなり定期船も終わっていたので、その日は鳥羽にある漁協のアパートに泊まった。翌日答志島に戻ったら、玄関を入った上がり口に、透明のビニール袋があり、中に小さな赤い紙に包まれた一見「ひなあられ」のようなものが置いてあった。「祭りで作ったお菓子だろうか?」とそっと開けてみたら、何やらカツオの角煮のような形と匂いがした。

 いつも気配りいただく永富洋一組合長の奥さんからだろうと思い、お礼の電話をしたが、そんなもの差し入れていないという。正直言ってあんまり食欲がわくようなものではなかったので、とりあえず冷蔵庫に。

 でも、いったいあれは何という食べ物だろうかと、どーしても気になったので、組合長の家まで行き、奥さんに「これは何ですか?」と見せたところ、「毒や-」とひと言。女性部が作り、各戸に配布する「猫いらず」だったのだ。私が、前日たまたまいなかった時に配布され、注意するようにとの放送もあったらしい。危うく答志島で葬式をあげるところであった。

 後日、この笑い話を市場に魚を水揚げに来た漁船の奥さんに話したら「大丈夫、食べても死なないから」とのこと。「えー、毒でしょ」と言うと、以前、腹をすかした子供が、私と同じように食べ物と思い食べたらしいが死ななかったとのこと。何とも、漁村の人はおおらかである。よい子はマネしないように。

 毒まで差し入れてくれる島の皆さんの親切さに感謝するが、信頼するのも時には注意が必要と学んだ。次の毒は、ゴキブリ退治用のホウ酸団子とのことなので、今からドキドキしながら待っている。