水経セミナー・集いのご案内

いよいよ来たか?

2016年11月30日

 伊勢湾内の漁模様がいつもと違う。資源管理優等生の春先のイカナゴ漁は何ゆえか資源が減少し、過去初めての禁漁となった一方で、マイワシが急増し鳥羽磯部漁協の上半期のマイワシ漁獲金額は前年対比108倍にもなった。

 それだけではない。マイワシを追ってか、10キロを超えるブリが湾奥部まで回遊してきている。先般市場でサワラ流し網漁船の水揚げを見て驚いた。普段はサワラが100尾獲れれば多くて5尾程度のワラサ(5キロ前後)が混獲される程度なのに、それが完全に逆転していた。重いワラサが先に掛かると網が沈んでサワラが掛からなくなり、これではワラサ流し網になってしまう。

 三重県の外湾地域でもマイワシが豊漁で、全国的にみて三重県に特異的にみられる現象と聞いて、私は「いよいよ来たか」と胸の高鳴る思いがした。前回マイワシ資源が増大する時にみられた現象と同じだから。

 資源回復期の主要産卵場は土佐湾周辺であるが、ここにはまき網漁業がないので、それが最初に本格的な漁業と遭遇するのが紀伊半島東岸で、当時もまず三重県で大量漁獲が起こった。ところがすぐ獲れなくなり、やはり一時的なものかと思われ始めたその数年後、一気に太平洋岸全域でマイワシが湧き、さらにその数年後日本海側でも大量に獲れ始めたのである。

 もちろん、今回が過去と同じとはいえない。国の水産研究所も「海洋環境の動向からみて前回の資源増大を可能にした寒冷レジームにあると判断することは難しく、近い将来に高水準期へ移行していくことは考えにくい」としている。

 市場に陳列された大型魚の口から小さなマイワシがのぞいているのを見ると、生態系を支える土台に思える。かつて鉄鋼が産業のコメと称されたが、マイワシもすべての水産業関係者を潤すコメである。底を打ち反転に向かい始めた日本漁業が、このコメでさらに本格的に回復することを願わざるを得ない。