Vol.64  10年目のお魚マイスター

マグロの実物の骨に大興奮?「おさかなマイスター」の出前授業

マグロの実物の骨に大興奮?「おさかなマイスター」の出前授業

 魚食普及の伝道師を育成する「おさかなマイスター」制度の創設から約10年。これまで19期の講座が開かれ「おさかなマイスター」388人を送り出してきた。魚介類を体系立てて学ぶ最難関の資格として、主要水産企業では資格取得補助の対象となり、一時金や給与アップの対象資格と認められるなど、業界内に着実に浸透。有資格者は全国のあらゆる現場で活躍している。「おさかなマイスター」の今を追う。

魚食普及の伝道師

マアジの塩焼き給食の前に箸の持ち方をチェック

マアジの塩焼き給食の前に箸の持ち方をチェック

 ペーパーテスト一発勝負の資格と違い、「おさかなマイスター」獲得には、4か月間合計22コマ(44時間)を一定数受ける必要がある。出席数不足なら、最後の修了試験の受検資格は得られない。

 座学が基本だが、天然魚と養殖魚を食べ比べるといった実践もある。魚介類の基礎知識のおさらいから、水産加工食品の知識、魚の栄養学、食品衛生、効果的なプレゼンの仕方、魚介類の名称と産地、マーケティングから流通、調理・料理論まで、多様な分野を学ぶ。

 講師陣は、各分野の権威として活躍する大学教授や、その道に詳しい人間なら誰もがその名前を聞いたことがあるプロフェッショナルの15人。

 受講資格は、水産や調理・飲食に関わる仕事で2年以上の従事経験者に絞っている。そのほか、不定期に開講される入門資格「おさかなマイスターアドバイザー」の有資格者でも受講が可能だ。

 水産業界の長いベテランも、自分の関わる一分野だけに知識が突出して、全体を見る目が養われていないことも多い。「おさかなマイスター」は魚食普及の担い手の育成に加え、担当者の視野を広げる効果も期待できる。

築地食育事業で講師を派遣

「旬のさかなクッキング教室」で秋サケのオスとメスを触って確かめる様子

「旬のさかなクッキング教室」で秋サケのオスとメスを触って確かめる様子

 晴れて「おさかなマイスター」の有資格者になった卒業生は、再び職場に戻って日々の業務に資格で得た知識を生かす。独自の魚食普及活動を立ち上げるケースもある。
 一方、2時間のフォローアップ研修を終えることで、日本おさかなマイスター協会事務局を運営する、東京・築地市場の水産物市場改善協会が実施している「築地食育事業」の講師を務めることもできる。

 「築地食育事業」は、小・中学校向けの出前授業「魚には骨がある」と、主に秋サケを材料にした「旬のさかなクッキング教室」を展開。「おさかなマイスター」を派遣している。
 出前授業「魚には骨がある」は年間30校ほど実施している。給食前の授業時間と絡め、煮干の解剖やマグロの実物の骨を見せながら、魚の基礎知識とともに魚の体の構造を勉強。給食に出るマアジの塩焼きを骨に注意しながら食べることに挑戦する。学年ごとのシナリオが完備しており、それぞれの年齢に最も効果的な演出をする。
 同じく小・中学校向けに年間5コマほど「旬のさかなクッキング教室」実施。国産秋サケのオスとメスを一本ずつ使って、家庭科の時間に調理実習を行う。講師を務めるのは、もちろん「おさかなマイスター」だ。

個別研修の企画・立案も

横浜の水産卸が「おさかなマイスター」の社員を専門学校に派遣して実施している「魚の授業」

横浜の水産卸が「おさかなマイスター」の社員を専門学校に派遣して実施している「魚の授業」

 春と秋の2度開催してきた「おさかなマイスター」講座も、主な会場としていた東京・築地市場の移転で、平成28年秋は一時休止。29年春から豊洲に移って再開の予定。
 主催する日本おさかなマイスター協会は「おさかなマイスター」講座をベースに、企業・団体向けの研修の企画・実施も行っており、大手企業などの利用実績がある。問い合わせは電話(03-3545-5644)とメールで受け付けている。

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