Vol.72  熱戦!全国学校給食甲子園

全国大会の調理審査の様子。地場産を使った学校給食を制限時間内に作成

全国大会の調理審査の様子。地場産を使った学校給食を制限時間内に作成

  昨秋の浜回り中、ある地区の漁協幹部に「今度近くの給食センターの先生が、うちの魚を使った献立で全国学校給食甲子園決勝大会に出るよ」と声を掛けられた。それから程なく“地場産物を活かした我が校の自慢料理”をうたう、第11回全国大会が東京・文京区の女子栄養大学で開かれ、代表となった12校が熱戦を展開した。学校給食を通じ、地元生産者を巻き込んだ地域全体の食育振興につなげようという意欲的取り組みを追う。

栄養教諭“腕試しの場”

食味審査。学校給食ゆえに子供審査員2人も参加

食味審査。学校給食ゆえに子供審査員2人も参加

 食育における学校給食の重要性は改めて指摘するまでもないが、平成17年に食育基本法が制定されてすぐ、イベントを通じた学校給食の重要性の認知度向上に取り掛かったのが、中小・ベンチャー企業、行政官庁、大学、マスコミからなる政策提言集団・21世紀構想研究会。全国学校給食甲子園の主催者団体だ。

 馬場錬成理事長は「学校給食は、子供の栄養と健康を支える役割はもちろんのこと、食文化、行儀作法、道徳、もっといえば食材から理科や社会の勉強にもつながる。当時から非常に重要な位置付けだった」と振り返る。にもかかわらず、食育基本法創設当時は、重要なはずの学校給食に携わる栄養教諭と調理員に日が当たっていなかった。

初年度から応募殺到

11回大会(昨年12月4日)は北海道・足寄町学校給食センターの吉田美優さん(右)と廣田裕美さん(左)が優勝

11回大会(昨年12月4日)は北海道・足寄町学校給食センターの吉田美優さん(右)と廣田裕美さん(左)が優勝

 同研究会では、文部科学省、全国学校栄養士協議会、農林水産省などに働き掛け、全国の栄養教諭と調理員らが腕を競い、技術を高め合う場を整えた。全国学校給食甲子園の始まりだ。

 大会当日までに給食で実際に提供したことがある、地場産品とその特色を生かした献立を組み合わせた学校給食を、複数回にわたる書類選考で選抜。各地区ブロックから選ばれた2校、計12の代表校(施設)が東京の全国大会に駒を進める。
 最初は手探り。初年度は応募総数の目標を1000件程度に設定した。しかし、フタを開けてみれば全国から1400件の応募が殺到することになった。馬場理事長は「自分たちの仕事が認められる場を求めていた栄養教諭らの思いの表れではないか」と話す。近年はコンスタントに2000件を超える応募がある。

 イベントは回を重ねるごとに洗練され、争いは年々高次元に。栄養教諭と調理員らが目標とする晴れ舞台となっている。

生産者との交流深化

 食育基本法制定と同時期に制度化された栄養教諭の、給食のみならず教育の場における重要性はどんどん高まっている。家庭における子供の食体験が貧しくなっている今、「子供らが健康的な食事をする重要な場であるし、郷土料理やおふくろの味の伝承の場になっている」(馬場理事長)。

 栄養教諭も期待される役割の大きさに応えていこうと、積極的に生産者と交流し、学校給食に地元産物を素材にした献立を取り入れようと熱心に取り組んでいる。全国学校給食甲子園は、そうした日常的な試みの集大成の場となりつつある。

子供にこそ“良品”を

足寄町学校給食センターの作品。右奥が道産マダラの「道産子ホイル焼き」

足寄町学校給食センターの作品。右奥が道産マダラの「道産子ホイル焼き」

 魚食普及の貴重な場として注目されている学校給食で、国産の地場産水産物の利用がなかなか進まないという見方もあるが「いいものを一大消費地に送る一方で『余ったものを給食で使って』という以前までの姿勢がまずかったのでは」と馬場理事長はみている。「生産者側から、旬のもの、おいしいものを子供らに提供しようという気概があれば、学校給食の献立としてもっと提供する機会は増やせる」と話す。

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