Vol.68  横浜市場の開放行事楽しもう

人気の「魚のさばき方教室」の様子。みんな真剣に魚に向き合う(横浜丸魚提供)

人気の「魚のさばき方教室」の様子。みんな真剣に魚に向き合う(横浜丸魚提供)

 横浜市場本場は、全国の中央市場水産物部では最も早い、平成20年から定期的な市場開放イベントを導入した。現在は月2回、水産仲卸ら実行委員が考えた各種企画で来場者をもてなし、魚の楽しさを伝えている。各地に市場開放が広がりつつある中、手作り感と“魚食普及特化”にこだわっている。現地を訪ねた。

魚食普及特化型目指す

魚河岸汁「マグロのつみれ汁」の配布。10月から再開へ

魚河岸汁「マグロのつみれ汁」の配布。10月から再開へ

 横浜市場本場の市場開放「ハマの市場を楽しもう」は毎月第1・第3土曜、午前9時から午前11時まで行われている。

 プログラムは「マグロ解体ショー」「市場探検隊」「佐島のおかみさんレシピ」「魚のさばき方教室」「おさかなマイスター教室」「青空市場」に加え、夏場を除き魚河岸特製の「海鮮汁の無料配布」なども行っている。

 中心になって市場開放イベントの運営に動いてきたのは、水産仲卸で組織する横浜魚市場卸協同組合(横浜魚卸)の幹部らだ。荒井聡副理事長は「最初は地域住民との交流を目的としたものだった」と当時を振り返る。

 市場のある横浜駅からみなとみらいに続く地区は再開発が進展し、急速に新施設や高層マンションが立ち並ぶエリアになった。同時に増えたのが、深夜から早朝に動く市場との騒音や交通をめぐるトラブル。「地域限定の市場開放を通じて、一般の人に市場の役割を知ってもらおうとした」。

 しかし、いざ始めてみて実感したのは、来場者から魚食が遠のいている実態だった。魚食の教師だった近所の魚屋さんが数を減らし、スーパーにはアジ、サバ、イカといった定番の魚ばかりが並ぶ。自分たちが「魚の食べ方やおいしさを教えないといけない」との危機感から“魚食普及特化”の思いを強くしていった。

その魚にしかない味を知って

横浜魚卸の荒井副理事長(左)と片山理事

横浜魚卸の荒井副理事長(左)と片山理事

 横浜魚卸の片山太理事らが先生役を務め、定員15人で3回行う「魚のさばき方教室」は、抽選で参加者を選抜する人気企画となっている。消費者がまず捌く機会のない魚介類も教室の題材にすることが人気となっている理由の一つだ。
 今は、何でも刺身や寿司などの生食ばかりがもてはやされているが、「さまざまな食べ方があることを知ってもらいたい」と片山理事。「魚は一尾一尾、味が違う。その魚にしかない味があることを知ってほしい」。

 横浜魚卸ら実行委員は2週に1度の会議で、週末の「ハマの市場を楽しもう」の企画を練る。荒井副理事長は「開放日が終わってすぐに次の会議が来るように感じる。常時イベント内容を考えているようなものだ」と苦笑いする。水産卸や関連事業者も支出しているとはいえ、開催関連予算はすべて自腹だ。

 イベント会社などを使えばもっと集客力は高まるかもしれない。しかし、布施是清理事長は「“フェース・トゥ・フェース”。温もりを感じられる市場開放でいたい」と思いを話す。今後は神奈川県内の漁港との連携をより一層強化し、埋もれている地魚のPRに努める。小売の現場で神奈川の魚が売れる土壌をつくる手助けをする。

【魚市場コラム】プロが日々の驚きを発信

 ほぼ毎日更新されている「魚市場コラム」


ほぼ毎日更新されている「魚市場コラム」

 横浜魚卸が運営するホームページ(http://www.hamaoroshi.or.jp)上で毎日のように更新され、横浜本場から魚の情報を発信しているのが「魚市場コラム」だ。

 塩干仲卸の坪倉良和理事(写真)が、最近の更新を担当する。坪倉理事は塩干物には精通するが、原料の魚種は限定的。そんな坪倉理事が毎朝売場を歩き、全国から集まる多種多様な魚たちと出合った際の新鮮な驚きを紹介している。「よく見ると、ほとんどがスーパーに並んでいない魚ばかり。高級魚も豊富」と、市場を歩く楽しさがにじみ出た内容となっている。

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