Vol.28  宅配寿司/“未利用魚”を積極活用

納入された魚はまず撮影

納入された魚はまず撮影

大手チェーン店をはじめ宅配寿司店では、ネット空間を利用してさまざまな販売促進を仕掛けている。京山(墨田区)はWEBを通じた販売方法だけでなく、商品そのもの=寿司種も異彩を放っている。「未利用魚」と呼ばれる、味以外の理由で二束三文で取引される魚を刺身に仕立て利用しているのだ。額に手ぬぐいを巻いた「サイバーおやじ」の異名をとる責任者の朝山議尊さんは、「ここまでくるのに2年かかった」と、WEBを通じた情報発信が売上高として実るまでの道のりを振り返る。握っている姿が見えなくても、細やかな情報発信で世界中に「ファン」を抱えられる。

WEBをフル活用

「サイバーおやじ」らしい作業机だ

「サイバーおやじ」らしい作業机だ

玄関先に並んだほろ付きのバイク、壁に大きく張られた地図、プーンと漂う寿司酢の香り…。よくある宅配寿司店らしい風景だが、何かが違う。朝山さんはパソコンの前で作業に没頭したり、手作りの「写真スタジオ」で寿司のWEB用写真を撮影したりと忙しく、額に巻かれた手ぬぐいの「板前らしさ」がむしろ浮いて見える。

ツイッター、フェイスブック(FB)はもちろん、ブログは5か所、ホームページ(HP)は4か所を使いこなす朝山さんのオフィスには、4台のパソコンと3台のデジタルカメラ、常に持ち歩くスマートフォンが3種の神器のように並べられている。それぞれの媒体をイメージ先行型(FB)、メニュー紹介(HP)、宣伝(ブログ)と使い分け、ツイッターではすべての情報を発信。更新は1日に10回はくだらない。

「今日はブリかま入りました!」。そんな緊急告知も並ぶ京山のツイッターだが、いちばんの売れ筋は「おまかせセット」だ。ワニゴチ、カイワリ、ホウボウ、ボラ…。およそ寿司種としては聞かれないばかりか、魚好きでなければ知らないような種類が京山の寿司おけには収まっている。

おいしさと共に「楽しさ」届ける

おけの中で輝きを増す寿司

おけの中で輝きを増す寿司

「築地に行ったら毎日変わった魚がたくさん入荷され、捨てられているのを知ってもったいないと思った」ことが、こうした未利用魚を握るようになったきっかけだ。何が入っているか分からない「おまかせセット」は、販売し始めて14年。FB、ツイッターの活用を本格化させた近2年でヒット商品に育ってきた。

同セットの半分超は、マグロ、サーモン、タマゴなど一般的な寿司種。残りは鮮度抜群でおいしさも折り紙つきだが「変わった魚」が入っている。中トロ入りの30カンで3580円とお得なこともあり、看板商品に育ったが「仕込みが死ぬほど大変」(朝山氏)で、さばいたら骨ばかりで内臓もおよそ食べられず、結局売り物にはならなかった、なんてことも一度や二度ではない。

京山のファンは、「寿司を食べる時においしい店を選ぶのは当たり前。『楽しさ』を提供してくれるのがいい」と言う。多くの飲食店がしのぎを削る今、提供されるサービスもさまざま。京山ではサイバー空間を通じて「楽しさ」を提供し、売り上げにつなげている。

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