Vol.4  宅配ビジネスどうやって“売る”か

パルシステム生活協同組合連合会

カタログは組合員と生産者をつなぐ

 商品を売るだけでなく、産地の様子、生産者の顔、その商品が開発されるまでの取り組みなど、「顔が見える関係」を重視する宅配サービス事業。商品を手に取り、自分で品物を選べない形態であるにもかかわらず、鮮度が重視されるような水産物も売られている。会員(消費者)と産地を結ぶ「伝言板」の役割をも果たしている商品カタログに魚を売るためのヒントがありそうだ。

 宅配ビジネスには、非営利の協同組織である生活協同組合と、独自の理念に基づいて設立された宅配事業会社がある。どちらも、取り扱い商品に厳しい品質基準を定めて契約生産者から直接商品を仕入れて会員に届けるカタログは組合員と生産者をつなぐなど、「安全・安心」や「顔の見える関係」を大事にしているところがほとんどだ。

 パルシステム生活協同組合連合会は、関東近郊の10生協と1共済事業連合会で構成。加入者は120万人以上に上り、現在の定期利用者は約65万人となっている。組合員はライフスタイルに合った商品カタログを3種類の中から選んだうえで週に1回注文する。

 一世帯当たりの平均利用金額(週1回注文)は5860円。このうち、水産品580円(購入数1.5点)、畜産品500円(1.1点)、冷凍食品640円(1.7点)で、畜産物と比較すると、肉より魚利用が多い傾向がうかがえる。

 パルでは2009年1月、水産資源の持続的な利用や水産業再生への取り組みなどを掲げた「水産方針」を制定。生産者や加工メーカーとの「産直」を行うようになってから、提携先商品の販売が伸びる傾向にあると、商品本部第一商品部水産課の佐藤克己課長は語る。

作り手の顔と思いを伝える

体験ツアーも実施、商品がより身近に

「消費者は価格だけで商品を選んではいない。生産者の思いや顔、生産過程をカタログなどで紹介することにより、組合員がより身近に商品や生産者を感じられるようになる」。

 例えば、5月4週目のカタログでは、産直提携をしている「北海道野付漁協」をピックアップ。カタログの表紙やコラムで生産現場の様子や野付漁協の人たちの顔やコメントなどを紹介しており、メッセージ性の強い情報誌となっている。

 パルの産直提携では、産地から直接商品を仕入れるだけではない。産地や工場を組合員が訪れて交流したり、環境問題や高齢化など産地の抱える問題をともに考えたりと、一つの事業として産地との取り組みを進めている。「サケ」ではなく「○○さんがとったサケ」という顔が見える関係となり、「組合員も生産者をより身近に感じられ、品質に対する安心感や購買意欲にもつながる」と佐藤課長は語る。

 「魚離れとは感じない。素材での水産購入量は10年前と比べると減少しているが、 加工品や半調理品も含めれば、組合員家庭での魚惣菜の食べる頻度はさほど減っていないだろう。今後は産地との関係性を深めるとともに、素材を重視した商品をどこまで作れるかが大事な課題だと思う」と佐藤課長は語っており、おいしい加工品や半調理品を『物語』とともに提供し、水産物そのもののおいしさも伝えていく意向だ。

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