Vol.5  天然の“ダシ”楽しめるスポット、幅広い年齢層が注目

 「たっぷりとダシの効いた味わい豊かな料理」のイメージはあっても、家庭で実践する機会は乏しい。調理技術の問題以前に、家庭でカツオ節やコンブなどを使い、ダシを取ること自体が確実に減っているからだ。だからといって、ダシの存在がわれわれの周囲から消えているわけではない。うま味を簡素化するあまり、化学調味料に押され気味だった食品産業界では、本物だけがもつ総合的なうま味を再認識し、改めてカツオ節やコンブを起用する傾向がみられる。動き出したダシ・ブームの一端を紹介する。

 食はわれわれ人間にとって生きるための大事な糧。そして魚食は健康な身体を育んできた日本人にとっても大切な源であり、文化でもある。そんな魚食を推進することで、ややもすれば低迷していると下を向きがちな水産業界が少しでも明るく元気になれるようなヒントになるべく、魚食推進を目的とした「魚食(うぉーく)にっぽん さかなで元気!プロジェクト」特集を開始する。今後、魚食をいろいろな側面から取り上げ、魚食の現状や課題、将来性について取り上げていきたい。

日本橋だし場 ? DASHI ?BAR

新しいスタイルで“ダシ”を楽しむ

 気軽に“ダシ”を楽しめるコーナーを設置するカツオ節やダシ関連商品を扱う企業も増えている。都内では、有楽町に味の素がプロデュースし、ヤマキなどが協賛する「dashi cafe」や日本橋ににんべんが展開する「日本橋だし場」などがニュースポットとして、幅広い年齢層から注目されている。

 昨年10月、日本橋コレド室町にオープンした「日本橋だし場(DASHI BAR)」では、削りたての本枯鰹節やそのダシがその場で味わえる。

 1杯100円という手ごろな価格の「かつお節だし」とコンブの「合わせだし」は開店半年で12万杯を を売り上げ、6月23日には14万杯を達成し、「当初の予想を超えた集客」(同社)という。

店内で毎日削られている

 客層は親子連れや女性客、夫婦、カップルなど幅広く、年齢が高い傾向にあった常連客以外にも20歳代から30歳代の若年層のお客も目立つ。

 お店を訪れた人は、「“ダシ”を飲むと落ち着く」や「バー感覚でおしゃれな雰囲気の中で、気軽に本格的なダシがいただける」と、利用する理由を話す。

 “ダシ”以外にも、ランチのみ限定で提供している「かつぶしめし」、毎月メニューが変わる「汁物」などもあり、テークアウトも可能。汁物は毎日、店内で削った本枯鰹節で取ったダシと季節の野菜など具材がたっぷり入り、1杯350円という手ごろな価格設定も魅力の一つとなっている。

自宅でダシを取るきっかけに

 「自宅で節を削ってダシを取るのは、やりたくてもできないのが現実。だし場で気軽に本物の味を楽しんでいただき、また、店内には削節のパックもあるので、これを機会に自宅でダシを取っていただく流れになれば」(同社)と、期待を込めている。

カツオダシの真髄、未知数 ? 受田 浩之 高知大学農学部教授 ?

 食品化学の分野からみてカツオ節は、いまだ知られざる可能性を秘めています。含まれる「ヒスチジン」は摂食後、酵素の働きでヒスタミンへと変化、食べ過ぎを抑える摂食抑制作用を示し、適度な食生活に貢献します。 同じく「アンセリン」には、眼精疲労を改善する効果が検証されており、疲労回復効果も見込まれます。

 ダシバーやダシカフェのように、上質なカツオ出汁を気軽に味わえる店舗が増えてきました。  これからは、疲れた身体をいやすのに、「会社帰りにちょっと一杯」が、居酒屋だけでなく、ダシを提供する店も指す日がくるかもしれませんね。

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