Vol.77  大水槽の前に 寿司処?資源安定の魚種のみ寿司種に

大水槽の魚を見ながら寿司を食べる

大水槽の魚を見ながら寿司を食べる

 見るだけでなく、魚や海をもっと深く知ってもらおうと、命の教育や資源についても学べる水族館が福島県いわき市にある。その水族館「アクアマリンふくしま」(安部義孝館長)は魚が泳ぐ大水槽を前に飲食スペースを設け、資源量が安定した魚だけをネタにした寿司を提供するなど、魚食普及にも力を入れている。

「環境を学ぶ体験型水族館」アクアマリンふくしま

資源が安定している魚種のみネタに

資源が安定している魚種のみネタに

 「アクアマリンふくしま」は「水族館は見るだけでなく、魚が食料としても大切なことを教える場にしたい」との安部館長の思いのもと、「海を通して人と地球の未来を考える」を基本理念に2003年に環境水族館宣言をした。体験学習などを通じ、環境を考えることのできる次世代の育成などを目指し、資源量の少ない魚種を食べることを避け、資源の安定している魚種を食べる運動「HAPPY OCEANS(ハッピーオーシャンズ)」に取り組んでいる。

 取り組みでは、愛嬌(きょう)のある魚の絵柄と合わせて、現在の資源状況を信号と同じ「赤・青・黄」で表現。赤信号は「大事に食べよう」、黄は「食べよう」、青は「すすんで食べよう」となっている。この運動に賛同するレストランやスーパー、寿司屋などを募集し、県内外で現在25か所の店舗や団体が加盟している。

魚種別の資源を分かりやすく表現

魚種別の資源を分かりやすく表現

 ハッピーオーシャンズの取り組みは「米国カリフォルニア州のモントレー湾水族館が始めた『シーフードウオッチ』がビジネス的にも成功していた。その取り組みをモデルに、当館でも導入を試みた」と、(公財)ふくしま海洋科学館の森俊彰さん。

 館内にある寿司処(どころ)「潮目の海」では赤信号の魚は扱わず、資源が安定している魚種のみネタにして出す。資源について触れたパネルを展示するなど「資源のことをより身近に感じる機会になれば」(森さん)と期待を込める。

 また命の大切さも学んでもらおうと、釣り体験のコーナーでは自分で釣った魚はすべて食べて帰ることを前提に釣ってもらう。釣った魚はその場でから揚げにしてくれるが、土・日曜限定で自分で調理することもできる。「家で魚を捌かないというお母さんも子供を前にすると、がんばって捌いたり、子供に何かを教えようとする。新たな意識が芽生えるようです」と森さん。

 2011年の東日本大震災後には「調(た)べラボ」を開設。漁業種だけでなく、釣り人が釣るような魚の放射性物質量を測定し、その場で公表し、試食会を開く。実際に見て、食べてもらうことで、少しでも風評被害を払拭(しょく)させるための取り組みを実施している。

 18年には、「世界水族館会議」がいわき市で開かれる。前回、カナダ・バンクーバーで開かれた同会議ではサステイナブルシーフードのセッションが盛り込まれた。資源を意識した魚食の取り組みに、今後も注目が集まりそうだ。

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