Vol.23  凍ったままで料理できる。それって常識?

業界関係者向けに「COOK IT FROZEN」の料理講習を開いたASMI

 女性の社会進出、核家族化、単身世帯の増加など、ライフスタイルの変化が強調される昨今。食に対してよほどのこだわりがない限り、時間がないと、電子レンジ対応品など簡便な加工品で済ませてしまうことがある。切身になっている冷凍魚でさえ、解凍する時間が面倒だ。しかし、実は“冷凍のままの状態で簡単に料理できる”ということが、意外と業界内では周知されていない。小売、流通業界で冷凍魚に対する理解が進めば、もしかしたら魚の消費の流れは少し変わるかもしれない。

[ASMI]「COOK IT FROZEN」日本での販促も好発進

「COOK IT FROZEN」のベニザケ調理例(ASMI 提供)

 その「冷凍」を水産物の売りとしてアピールしているのが、アラスカシーフードマーケティング協会(ASMI)。冷凍の天然アラスカシーフードは最高品質の証しであり、新鮮で獲れたてのものを急速冷凍することで、食卓までその状態をキープして届けられるというもの。そして、その凍ったままのサーモンやスケソウを、わずかな時間であっという間に簡単料理できる「COOK IT FROZEN」の販促活動が2001年から、米国内で始まった。米国内では何百万回ものサンプリングと量販店でのデモを実施し、広告、消費者向けPR、Webでのレシピ紹介、アプリなどさまざまな手法を使って販促を行ってきた。

 その結果、自宅の冷凍庫に何か月も保存でき、必要な時に必要な分を取り出して、わずか数分で焼いたり、蒸したり、おいしい魚料理が手軽に調理できるということで、冷凍魚はヘルシーでファストなフードであるとの認知が米国市場で広まった。
 その日本バージョンの販促活動が12年からスタートしている。米国で使用している英語のタグラインを日本語版に直し、今年3月にはクッキングプロデューサーである葛恵子氏により、サケやマダラ、アサバガレイの3魚種を使った日本人の嗜好に合う和風レシピが開発され、8月には2魚種が加わった。

 これらのレシピはASMI日本語サイトに毎月1つずつ、アップされている。今後、ASMI日本では、新しいアイテムのレシピを追加しながら、水産冷食メーカーとの提携や家電メーカーなどとのタイアップなど、さまざまな場面で「COOK IT FROZEN」を紹介していく計画だ。

[大冷]人手不足の現場で利用進む、手間かかる煮魚も湯煎のみ

冷凍庫から出し、すぐに調理できる

◆解凍不要の「楽らくクックシリーズ」

 「楽らくクックシリーズ」「楽らく調味シリーズ」など、冷凍したまま調理できる業務向け商品を多数発売している大冷。冷凍庫から取り出し、すぐに加熱調理できることで、病院や福祉施設など人手不足の現場や、ロスの削減などを図りたい事業者から高い評価を受けており、導入のメリットが大きいことから、従来の要解凍の「骨なし魚」シリーズからの切り替えが増加している。主力商品の「楽らくクックシリーズ」は「骨なし魚」のカテゴリーの約7割を占めるまでに拡大し、その人気のほどがうかがわれる。特にこの商品は、冷凍のまま調理できることに加えて、特許技術により、冷凍したまま調理しても、パサつかないことやアクが出ない、身の縮みが少ない、臭みがないなど、他の商品にはない特徴も強みの一つだ。また「楽らく調味シリーズ」は「楽らく」シリーズの技術を応用し、完成した画期的な商品で、味付けしていない冷凍の魚にタレを加えた状態でパック。調理現場では冷凍のまま湯煎などで調理し、煮魚が完成する。煮魚は調理に時間がかかるため、ニーズがあってもなかなかメニュー化しづらかったが、同商品は老人ホームなど、少人数体制の調理現場で活躍の場を広げている。
 同社は来年2月に、全く調理がいらない自然解凍の塩焼きの商品を発表予定で、さらに魚メニューを手軽に利用できる商品を展開していく。ホテルの朝食バイキングなどに向けたもので、さらに時間と人手をかけずに済み、水産物の利用を高めていきそうだ。

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