Vol.60  ヒロ中田さん、「新・ご当地グルメ」提唱

ヒロ中田さんが関与したご当地グルメ。写真のパンフはすべて魚メーン

ヒロ中田さんが関与したご当地グルメ。写真のパンフはすべて魚メーン

 「深浦マグロステーキ丼(マグステ丼)」は昨秋、デビューから864日(約2年4か月)で累計10万食提供を達成した青森・深浦町のモンスターご当地グルメだ。町外から訪れた観光客が町に約5・5億円もの経済効果をもたらした。多くの人を引き付けてやまない魅力の源泉はどこにあるのか。マグステ丼に代表される、地産地消にこだわった「新・ご当地グルメ」を提唱し、各地で開発に関与してきたヒロ中田さんに話を聞いた。

とにかく地場産!

全国を飛び回るヒロ中田さん。移動手段は飛行機主体なのが「空飛ぶ」名前のゆえん

全国を飛び回るヒロ中田さん。移動手段は飛行機主体なのが「空飛ぶ」名前のゆえん

◇ヒロ中田さんが関わるご当地グルメの人気の秘訣(けつ)は何ですか。

ヒロ中田さん/ご当地グルメの開発に力を入れ始めた当初(平成17年ごろ)は、ご当地グルメブームの盛り。すでに、素材をただシンプルに(刺身や具材で)使っただけのものを世に出しただけでは、高い評価は受けられる時代ではなかった。

 中には、地場産食材をあまり使わないものさえあった。ただ、僕はもともと「地産地消」で地域を元気にしたいというのが開発の動機だったから、とにかく地場産食材にこだわり開発してきた。

提供スタイル妥協せず

◇日本の地場産食材は多様とはいえ、重複も出てくると思いますが。

ヒロ中田さん/理想をいえば、その地域の食材でないと成り立たないストーリー性が構築できることだ。例えば、青森・深浦町「深浦マグロステーキ丼」ならば、青森・大間を抑えて「本マグロの水揚げが青森県ナンバーワン」といった具合だ。

 ストーリー性が弱かったら、まねができない提供スタイルを妥協せず突き詰める。水産物は保守的で、素材のまま提供することが多いが、火を入れることも試してみる。成功には見た目も大事で、共通の器を提供店の負担で買ってもらって、統一感のある見た目の演出もしている。差別化につながり、参入障壁になる。

開発の主役は提供店舗

◇メニュー開発の際はヒロ中田さんが中心になって考えるのですか。

ヒロ中田さん/僕が考えるのは、ご当地グルメのネーミングと方向性。メニュー開発の主役は将来的に提供店になる店の方々だ。

 外部の人間が考えたレシピを持ち込んでも、単なる押し付けはしらけてしまうし、必要となる調理スキルが身の丈に合わないものではおいしくならないし、うまくいかない。結局は長続きしない。

 まずはご当地グルメのネーミング(方向性)を伝え、各人に自由に作ってもらうということを繰り返す。互いにアイデアを出し合ってだんだんと洗練されてきたら、いよいよ全員でチームを組んで、本当のレシピづくりに挑戦する。

 そこからは僕との1対1。プロデューサーとしていろいろ言う。目の敵役的ポジションで僕が入ることでチームの結束力が増す。時に酒も入った場で活発なやり取りを通して、出来上がったご当地グルメのレシピは、自分たちが開発したと胸を張って言えるものへと仕上がっている。

10年続く組織づくり

◇なるほど。それがご当地グルメ提供側に愛着を生み出すのですね。

ヒロ中田さん/ご当地グルメは最低10年続かないと意味がないと思う。レシピ開発した当時の情熱も時がたてば冷めてくるかもしれない。そこで、年会費や活動費を徴収して運営する協議会を立ち上げ、定義・ルールの管理やPRを行っていくスタイルを採用している。
 長く続けるカギは、提供店の方々のご当地グルメ愛に加え、地元を愛する協議会事務局のバックアップ力にあると思う。ご当地グルメの成功ポイントはここにある。

「魚メーン」が65・5%

魚メーンで一番人気のご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼」

魚メーンで一番人気のご当地グルメ「深浦マグロステーキ丼」

◇日本の特徴ある地場産食材といえば水産のイメージがありますが。

ヒロ中田さん/僕が開発に関与したご当地グルメの65・5%が魚がメーンだ。肉や野菜と比べると、魚の種類は非常に豊富な分、「新・ご当地グルメ」化しやすい。

 ただ、僕がご当地グルメの成功のカギだと思っている通年提供と年間統一価格が、水産物ではネックになりがちだ。現在は「漁法別価格制度」の導入など、さらなる改善を試みているところだ。

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