スポーツの秋だ。実はスケソウのタンパク質は質が高いうえに筋肉を増加させる効果があるということが分かってきた。加齢とともに衰えていく筋肉の減少を抑える可能性が示唆されるスケソウのタンパク質に今、スポーツ界や医療・高齢者福祉関連業界から熱視線が送られつつある。
スケソウのタンパク質は栄養面と機能面で実は非常に優れていることが、これまで10年間のさまざまな研究により分かってきた。栄養面では、良質なタンパク質として知られる卵を上回って、体に利用されやすい良質なタンパク質だ。機能面では、スケソウを1週間食べると筋肉が増加し、特に瞬発力の源である「速筋」が肥大することが動物実験で分かっている。
日本水産(株)食品機能科学研究所機能性素材開発課の内田健志副主任研究員は、「スケソウのタンパク質の最大の特徴は、運動後に筋肉が大きくなる作用と同様な刺激を筋肉に与えることができること。運動をすると筋肉の繊維が壊れて筋肉痛になり、その後自己回復力が刺激され、それまで以上に筋肉が大きくなる。スケソウを食べるとその自己回復力を刺激し、動物では最短3日で筋肉が肥大する」という。実際に65歳以上の女性19人に、特別な運動はせずにスケソウのミンチ(タンパク質4・5グラムを含む)を3か月間摂取してもらう実験を行ったところ、15人の除脂肪量(筋肉量の指標)が増加したという結果を得た。また、もう一つの特徴として、筋肉が増加するだけでなく、持久力を担う「遅筋」と瞬発力を担う「速筋」のうち、特に速筋の筋繊維が肥大する。
「病気やけがの治療で入院すると、治癒して退院する頃に筋肉が衰えてしまうのが現状。入院の間にスケソウを摂取すれば、短期間で筋力を付けることが期待できる。ただそのためには多くのエビデンスが必要であり、目下、12の大学や研究機関と研究を進めている」と話す。また、実際に介護施設から試験的に使ってみたいと要請があり、11月からの提供に向けメニュー開発を進めているという。
「最近、ちまたでは“美筋”がもてはやされており、美しく痩せて美しい筋肉を付けたい人たちにもこのスケソウタンパク質の効果が期待されている。スケソウの生産者をはじめ水産業界では、まだこの研究成果について知られていないと思うが、最終的にはスケソウの価値が上がれば、業界も活性化する。そのためにも研究や普及活動に注力したい」と力を込める。
スケソウの主産地であるアラスカのアラスカシーフードマーケティング協会(ASMI)では、昨年から日本水産とともに栄養士向けや業界向けにスケソウの機能や栄養価に関するセミナーを開催している。
ASMI日本の家形晶子レプレゼンタティブは「スリ身製品などメーカーに対しては“アラスカ産”という価値を商品に乗せてブランド販売につなげてほしいと話している」という。年明けには大阪でセミナーを予定している。